buonitaliaのblog

近頃魚屋でアンコウをよく見かける。名前はヒキガエルのシッポという意味で「Coda di rospo」(コーダ ディ ロスポ)。頭は切り取られて店頭には並ばず、ゼラチン質の皮も全部剥いである。

アンコウは肉厚で骨が少なくて骨を恐れるイタリア人も安心して食べられるのだろう。欧米ではお箸を使わないせいか、皆骨の多い魚を嫌う。レストランで魚を頼むとウエイターが骨を全部取り除いてお皿に盛ってくれるが、じっくり骨を除けながら箸で食べてしみじみする感覚とはちょっと違う。お皿にとりわけた時点で魚が冷えてしまうのも残念に思う。でもたしかに、フォークとナイフでは上手く骨を取り除けないので、仕方がないか。

アンコウは日本だと鍋が多いが、こちらではトマト煮、ホイル焼き、グリルなどをよく見かける。今日はトマトで煮てみることにした。

アンコウは塩をふってニンニクを4カケ包丁で軽く潰し、オリーブオイルと炒める。そこにアンコウとイタリアンパセリをそのまま入れて炒め、白ワインを半カップ入れる。次にトマト(ミニトマトの方が甘みがでてよい)を5、6個半分に切ったもの、オリーブの実約10個を入れ、蓋をしたら30分くらい中火で煮て出来上がりだ。アンコウの臭みが残らないように、ニンニクと白ワインをうまく使い、火を切る前にイタリアンパセリのみじん切りをたっぷり入れて出来上がりだ。

プリプリした感じの肉質はトマト味でもよく合い、なかなかおいしい。それでもかすかに匂いが気になるような気がしたので、ペペロンチーノを入れて辛くしたらもっとよくなるかなと思う。白身の魚とオリーブオイルとニンニクの組み合せはおいしいのだが、やはり日本人にはしょう油味の方がしっくりくるような気がする。

皮やキモなどおいしい部分を全部捨ててしまうのかと思うともったいない。日本ではアンコウのキモも食べるんだよと一緒に食べたイタリア人の友人に言うと、かなり、というかものすごく変な顔をされた。アンキモって珍味でおいしいのに・・・。そういえばシルヴィオも最初に食べた時はギョッとしていたっけ(今は好きだけど)。

今日子



夜はまだ冷え込むが、昼間の日差しが強くなって来た。昨日近くのトラクターを持っている農家に頼んで、夏野菜を植えるための畑の準備をしてもらった。もう一軒の農家には肥やしに牛や羊の糞も持ってきてもらい、土の栄養分を補給する。以前は家で出る残飯を落ち葉や土と一緒に混ぜて肥料を作っていたが、あまりに大変なのでやめてしまった。何よりも容器の蓋を開けた時にでてくる大量のハエやウジ虫が精神衛生上よくなかった。しかし残飯と落ち葉で作る肥料は出来上がるととてもいい匂いがし、土に最も良い栄養だそうだ。これをやらないので畑の土がどんどん弱っていると新聞に書いてあった。今年はまた始めようかどうしようか迷うところだ。

明日あさって雨が降るということなので、その前に種を蒔いておかなければと、今日は朝からレタスの苗やイタリアンパセリ、ズッキーニ、インゲンを植えた。今年は気合いを入れて種からトマトを育てている。しかしまだ夜は寒く、小さな苗が枯れてしまってはいけないので、まだ家の中と日差しの強いベランダを行ったり来たりだ。一体いつになったらシルヴィオの大事なピアノの下にある大量のトマトの苗が畑に植えられるだろう。

畑を初めて5年になると、あの年はどうだった、去年はああだった、と自分だけが覚えている上手くいかなかったことも多いので、毎年いろいろな課題も尽きない。

そろそろうちの近辺でも野生のアスパラガスが芽をだしはじめた。まだ出始めで、散歩中に見つけたのは3本だけ。3本では料理にも使えないし、そのままポケットの中でひからびてしまった。庭に植えたアスパラガスは昨日芽がでているのを発見してうれしくなった。これも10本程度しかでていなかったので、柔らかく蒸して塩、レモン汁、オリーブオイルで食べることにする。

この時期のもう一つの旬の野菜はチコーリアというタンポポの葉に似た野生の葉っぱだ。苦みが結構強いが、イタリアの人はこれを茹でた後オリーブオイルとニンニクと唐辛子で炒めたものを大変好んで食べる。

野でかごを持って腰を屈めている人がいたら、必ずこのチコーリアを採っている人だ。うちでもよく食べるこのチコーリア、今日は乾燥空豆と一緒に煮てスープにして食べた。種類によって味も異なる乾燥豆だが、空豆のやさしい味がチコーリアのほろ苦さを緩和して、野趣溢れつつ、ホッとする味になる。4歳の息子はこういう料理が嫌いなので、彼が幼稚園でいない時にシルヴィオと2人でゆっくり食べるようにする。息子がこういう味をおいしいと思うようになるにはまだまだ時間がかかるなあと思いつつ。

今日子



イタリアの食品店ではよく雑穀を見かける。雑穀と言ってもいろいろな種類があるが、例を挙げると、ファッロ(巻き舌で)というスペルト小麦(9千年前からヨーロッパで栽培されている小麦で、栄養価も抜群、小麦アレルギーの人にも最適)、大麦、など。それに乾燥のグリーンピースやヒヨコ豆に空豆、レンズ豆を混ぜて売られている。初め見た時、鳥のエサかと思った。日本でも白米に雑穀を混ぜて食べたりするが、こちらではスープにすることが多い(おもに女性が好んで食べるような気がする)。皆体に良い食べ物をおいしく食べるように心がけている。

作り方も簡単だ。雑穀類(好みの雑穀、豆を合わせてもいい)を水に一晩漬けておく。乾燥の豆や雑穀は新しいとすぐ煮えるが、古いといつまでたっても柔らかくならないので、製造年月日をよく見て買う。鍋にニンニク(なくてもよい)とオリーブオイル、小さめの乱切りにしたニンジンとセロリを弱火で炒める。香りがでてきたら、ポロネギ、ズッキーニなど冷蔵庫に残っている野菜も乱切りにして入れ、水をきった雑穀類を入れる。ざっと炒めたら熱湯をたっぷり入れ、弱火で2、3時間ゆっくりコトコトと煮る。一番最初にでてくるアクは必ずとる。とらないと食べた後お腹に空気がたまってつらい。あとのアクは旨味が入っているので全部とってしまわないことが大切だ。1時間くらいしたら塩も入れておく。これで柔らかくなれば出来上がりだ。

スープというかおじやみたいな感じなのだが、私がいつも感心するのは、固形スープの素をいれなくても野菜や穀類、豆の味がきちんとでていてとてもおいしいということだ。固形スープの素の味に慣れていたら、きっと味があまりしないと感じる人もいるだろう。が、慣れるとやさしくてじんわり体にしみていくような味がわかるようになる。アツアツをお皿に盛ってオリーブオイルを上からタラリとかけて食べると、オリーブオイルの芳香が穀類をさっぱりと、それでいて濃厚に食べさせてくれる。私は健康だけを気にしてご飯を食べようとは思わないが、こういった野菜や雑穀を食べた後は、胃もすっきり、お通じもよくて体調も万全になる。もちろんサラミやベーコンやチーズも大好きだが、基本的にはこういったものをベースに食べるのを好む、胴長の人間だなと思う。

今日子



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