buonitaliaのblog

日本のスーパーではデ・チェッコの9番など、細めのパスタをよく見かけるが、私は太いパスタが好きだ。家ではほとんどデ・チェッコの12番を使う。モリモリ食べられる食感がよいし、濃厚なソースにも野菜たっぷりにもよく合う。細めのスパゲッティだとおとなしくて物足りない感じか。アサリのスパゲッティなどはさらに太い14番のヴェルミチェッリなどもバッチリあう。

よく作る手打ちパスタも、パスタマシンで均一にきれいに作るのではなく、麺棒で伸ばしていき、厚さも切った時の太さも多少バラバラなのが好きだ。食べた時にゴロゴロする感じで、ソースが均一に絡まないところが口の中で踊っているように楽しい。ラーメンの麺だとまた別で、きれいに均一に切らないとスープとの絡み具合が好きではなく、何度かためして挫折した。イタリア料理はやはり修行が必要なものではなく、家庭で作れるところがうれしい。

以前からアブルッツォ州の名物、「パスタ アッラ キタッラ」を自分で作りたいなと思っていた。キタッラはイタリア語でギターのことだ。なんでパスタがギターなのかしらと思っていたのが、昨日ようやくわかった。このパスタの特徴は、麺が丸くないことだ。切り口を見るとわかりやすく、普通のスパゲッティの断面が丸いのに対して、このパスタは四角いのだ。それがどうしたと思うかもしれないが、この角張ったところが普通のパスタと一線を置く。フェットチーネ(きしめんのようなパスタ)ともまた違う。フェットチーネだと角張っていても平べったいが、これはとにかく四角いのだ(説明がむずかしいな)。長方形を長く伸ばしてそのまま麺にしたと言ったらよいか。食べた時にカクカクした食感が良い。これは手で切ってもどうしてもこうはならず、専用のパスタマシンでやるか、伝統的な器具が必要だ。その伝統的な器具が昨日手に入った。これを見てみると、長方形の木の箱の表と裏にギターのように弦がはってある。それでギターパスタなのだ。ギターを弾きながら食べるパスタではなかった。箱の弦は表が細いパスタ用、裏が太いパスタ用に幅を変えてある。卵入りの生地を薄くのばしてから弦の上に敷き、麺棒で押さえつけて転がすと下に生地が切れて落ちて行く。こうするときれいに四角く切れていく仕組みだ。よく出来ていると感心する。この器具は高価なものではなく、2千円もあれば買えてしまうが、職人さんの手作り感があって台所に置いておくだけでも趣きがある。12月、1月と休みをとっていたニワトリが近頃また卵を産み始めたらしく、これから3月までご近所さんから新鮮な卵が大量に届くので、今年はパスタ アッラ キタッラをたくさん作ってみるつもりで楽しみだ。

今日子



イタリアはここ4、5日大寒波だ。南イタリアでは3日間高速道路から出られない車が延々200キロもいる。3日間も大雪の中、高速道路で動けないなんて考えただけでも恐ろしい。私の住んでいる所では、車で20分の駅から電車が通っていないらしいが、おかしなことに私の家のまわりだけ晴れている。いつもそうなのだが、近くで大雨洪水になったりしても、ここだけは災害にあわない。今回の雪も、10センチも降らないうちに終わってしまった。それなのに村の学校は全て休校になったりして変だなと思う。「雪には慣れていないから」だそうだ(??)。しかしこの天候の良さが、オリーブの木にもよい影響を与えるのだろう。

今日は昨年12月初めに収穫したオリーブの実をどうにかしなければと思い立った。収穫した次の日には東京に帰ったりして、二ヶ月近くほったらかしにしてしまった。生のオリーブはとにかく苦くて食べられないので、瓶に入れて塩漬けにしておく。普通1ヶ月もしないうちに下に黒い水がたまっているので、それを捨てて1週間程水につけて塩抜きをする。カビが生えないよう、2日ごとくらいで水を代える。これで味見して塩加減がちょうど良くなっていたら、ペーストやオイル漬けなどを作る。ただの塩漬けで置いておくとカビが生えるが、市販のオリーブの塩漬けのように保存料を入れるわけにもいかない。カビ対策を万全にすることが大切だ。ペーストの場合は、種を抜いてレモン汁を入れ、ミキサーにかけて瓶詰めの煮沸消毒にする(これが面倒くさくて2ヶ月近くもほったらかしていたのだ)。市販のものだとオリーブオイルを入れてから煮沸をするが、やはり食べる時に熱を加えていないオリーブオイルを混ぜる方がおいしいので、私はこの方法を使う。ペーストはブルスケッタにしたり、パスタに和えたり、トマトソースに混ぜたり、ちょっとした食卓の変化にとても役に立つ。オリーブオイルはペーストと同量くらい混ぜるので、最終的には二倍近くの量になる。オリーブのなんとも言えない苦みはとてもおいしい。

今年は他にオリーブの実のオイル漬けを作ってみた。塩漬けの実を煮沸消毒すると柔らかくなりすぎてしまい、味も落ちるが、ここは天然保存料のオリーブオイルをたっぷり使う。全部漬かっていればいつまでもカビが生えない。家の大家さんはオリーブの実にニンニクやペペロンチーノをたっぷり入れて保存するし、カポッチ家ではワインビネガーにつけ込んだり、各家庭によって少しずつ保存の仕方が異なる。日本でいうと田舎の家の漬け物のような感じ。生ハムのような派手な保存食も楽しいが、地味なものでも自分の家で採れたものを大切に保存できるのがうれしい。私の手作りではないが、吟味してこれにとても近い味のおいしいペーストを作っている所を見つけたので、ブオーノイタリアのお店にも春くらいにはオリーブのペーストが並ぶ予定だ。皆さん楽しみにしていて下さい。

今日子



パルミジャーノはおいしい。イタリア食材の中で最も世界中に知られているのもうなずける。たまにイタリア人でも嫌いな人がいるけれどごく少数で、何にかけてもおいしい。イタリアに来たばかりの頃、どんなパスタにも山ほどかけて食べていたのだが、ある時夫にそんなにかけたら他の味がしなくなってしまうじゃないと言われた。そういう食べ方は「ダサイ」と。ダサイ?これはいけない、ダサイ食べ方なんて嫌だと思い、かけすぎないよう気をつけてみた。

まず第一に、パルミジャーノは魚介類には使わない。魚介類のデリケートな味を消してしまうし、何よりも二つの味は合わないという。そういえば、アサリのスパゲッティにパルミジャーノはかけないか。たまにほんのパラリ程度にかける分には大丈夫、というシェフもいるそうだが、めったに見ない。

他にはオリーブの実のペーストのパスタなどもそうだ。先日いつものようにフランス人のおばちゃんとその旦那さん(イタリア人)、イギリス人とイタリア人の夫婦を夕食に招待した際に、ペーストのパスタを作ってみた。このフランス人のおばちゃんは、この近くでものすごく素敵なホテルをやっていた人で、ホテルのレストランも自分でやっていたような料理上手な人だ(ホテルは年金生活になり2年前に閉めた)。

私がパスタを茹で終わってペーストを混ぜようとしていると、パルミジャーノをどっさり入れようとした。遠慮がちに「パルミジャーノはテーブルにおいてそれぞれ好きに使えばどうかしら」と言うと、「あら、パルミジャーノは普通みんなパスタにかけるでしょう?」と言われた。「ええ、でも、例えば私なんかはこのパスタにはかけなくてもいいかなと思って・・・」と言うと「あらそう」と変な顔をした。そして食事が始まってみると、パルミジャーノをかけたのはフランス人とイギリス人の二人だけだった。オリーブの優しい味にパルミジャーノは強すぎる。しかしコッテリ系が好きな人なら物足りないと思ってしまうのだろう。フランスもイギリスも食事がこってりだしなと納得する。
*このおばちゃんのやっていたレストランは、フランス料理寄りのイタリア料理で、もちろんとてもおいしかった。

外国人に人気のカプリッチョーザというピザ、卵やハム、野菜にチーズと具沢山ピザで、私も実は好きなのだが、イタリア人にとっては邪道だという。日本人はざるそばが好きだが、外国人にとってはこのシンプルで素朴な味がおいしいんだよ、と言われて学習しないと「フ~ン・・・」と思うことになる。

夫が和食を食べていて、しょうゆってパルミジャーノに似ているねと言ったことがある。おいしいけど、パルミジャーノのように塩分が強くて旨味も強いから、たくさん使うと他の味が消えてしまうじゃない、という。料理を生かしもするし殺しもする。世界に広がるパルミジャーノとソイソース、意外な所で接点があった。

今日子



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