フォカッチャは地域によっていろいろなタイプがある。ウンブリアの私の近所のフォカッチャは、薪のオーブンで焼くピザで、周りがバリッとした厚めのものだ。

見学に行ったパン屋さんでの作り方は、塩なしパンと同じタネ(小麦粉と水を練って発酵させた天然酵母、ビール酵母、薄力粉、ぬるま湯)に、さらにオリーブオイルを大量に入れる。小麦粉50キロに対して1リットルは入れるだろうか。そしてもう一度ビール酵母を固形のまま足し、塩も入れてこね直す。そして生地の表面にオリーブオイルをたっぷり塗り、丸い形を作って発酵させる。時間は2時間だ。

そしてローズマリーと塩をちらして薪のオーブンでこんがり焼く。周りがバリバリして中はふわりとしておいしい。

ローマのパン屋さんのフォカッチャは、まず形も違う。もっと薄くて下はバリッと固く、上は生地をオイルで揚げたような感じだ。

作り方は、薄力粉にビール酵母を混ぜる。こちらは100キロの薄力粉に対してビール酵母が25~30gとかなり少ない。もちろん、ビール酵母は少ないにこしたことはない。酵母は腸内にガスを作り、カビが繁殖しやすくなり、消化にもよくないからだ(だいたい店では1日200kg以上フォカッチャが売れるそう)。

その生地にぬるま湯を入れてよく混ぜる。ウンブリアのもローマのもかなり水分が多く、この分量は手で触って判断するという。そこにオリーブオイルも入れるが、こちらも1リットル瓶一本分は入るだろう。

発酵する段階でも生地を丸めた後オリーブオイルを塗る。パン屋さんは大きな生地の固まりを簡単に持ち上げるが、実際はかなり柔らかくて型がくずれないように移動させるのはむずかしい。

そして4、5時間発酵させる。できたら生地を1m以上ある長方形の板の上に置いて手でのばしていく。下に打ち粉の代わりにセモリナ粉を十分に打っておく。ここからが面白い。マッサージと言って、両手で生地の全体をポンポンリズミカルにたたいていく。すると見る見るうちに生地がボコボコと凹凸をだしていく。こうすることで表面についているオリーブオイルと塩を生地に埋め込むのだそう。これはすごい職人技で面白い。

次に320度に熱したガスオーブンに入れる。大きな50センチくらいの長さの板で長い枝がついているものに器用に生地を元の半分の長さに縮め、オーブンの中に入れる時にまた元の長さに戻す(これもまたむずかしそうだ)。そして10分以上焼く。セモリナ粉は生地を滑りやすくするだけでなく、生地とオーブンの間にもう一つ層が出来、バリバリした香ばしい焼き加減になる。

焼けると表面がとてもきれいなきつね色になって見るからにおいしそうだ。このフォカッチャはローマの数あるフォカッチャの中でも一番のお気に入りで、行くとかならず食べる。薄くて表面が固いのに、中はきれいな気泡が出来てふわりとしている。日本で食べるファカッチャのモチモチした感触はまったくない(イタリア人はモチモチした食感を嫌う傾向がある)。

フォカッチャはどちらのパン屋もビール酵母を使うが、ウンブリアのはローマのに比べて随分多い。従って発酵時間も短くなるので胃にあまり良いとは言えない。しかし薪のオーブンで焼くおかげで、ビール酵母特有の臭みをとる。ものすごい高温(700度とかそのくらい)なので、酵母の悪い部分がなくなって軽くなる。

両方とも特徴がそれぞれ生かされていて、このパン屋見学はすごく面白いものになった。これから自宅でもパンやファカッチャを焼くのに役立てたい。

今日子