夏にたくさん採れた紫色のプルーン。よく乾燥のプルーンは売っているが、私はジャムをたくさん作った。それでもあり余っていたので、実験的にプルーンを半分に割り、種をのけて砂糖をたっぷりかけて冷凍にしておいた。これできちんと保存できているか見てみたら、甘みがしみ込みやわらかくおいしくなっていた。でも食べるとちょっと皮が気になったので、これを使ってトルタを作ることにした。クロスタータというイタリアのどこででも見られるトルタは、だいたいどこで食べてもあまりおいしいと思わないようなトルタだ。バターや卵をたっぷり使わないのでボソボソっとしたタルト生地に、ただジャムを塗って焼いただけのトルタ。しかし田舎で手作りのジャムを使い、生地をちょっと私なりに工夫してみたら、おいしいトルタができあがった。

まず、生地にバターを使わないで、ラードを使う(もちろん、豚を解体した時に自分で作ったラード)。小麦粉500グラムと、その三分の一のラード、150から200グラムの砂糖(好みで)、ひとつまみの塩、卵2個、アーモンドプードル、レモン半個分の皮をおろしたものを小麦粉になじむまで手で混ぜる。ボロボロっとした状態になったら一つに丸めてラップに包み、冷蔵庫で30分程休ませる。

この生地を半分より少し多めにとり、タルト型、またはオーブン皿にラードを薄く塗り、生地を3、4ミリの厚さに伸ばしてしく。余った生地は下になる生地より少し薄めに伸ばしてから、包丁又はルレットで1センチから1.5センチの幅に切っていく。

次にオーブン皿にしいた生地の上に、プルーンのジャムをまんべんなく塗り、砂糖漬けのプルーンを敷き詰める。そして長めに切っておいた生地を格子状にしいていく。これで180度のオーブンに入れ、約40分、生地がキツネ色になるまで焼く。

日本で食べるようなフワフワしたケーキに比べると、日持ちがする。日に日に味が落ち着いておいしくなっていく感じだ。イタリアでは日本と正反対で、日持ちのするケーキの方が好まれる。生地にラードを使うと、香ばしくてサクサクしたかんじになる(ショートニングに近いかもしれない)。自家製のラードは新鮮な脂肪を使うので、豚の臭いがまったくしない。豚の脂をお菓子につかうなんて、と最初に思ったのは間違いだった。ジャムをもう一度オーブンで焼くと水分がとんで、もっと果物の味が濃くなる。最初皮が気になったプルーンも柔らかくなり、新鮮な果物をたっぷり使ったトルタと変わらない。アーモンドはいろいろなお菓子に役立つのでいつも台所に置いてあるし、他にもあり合わせの材料で最高においしくてかわいらしいトルタが焼けるのが、田舎生活の楽しみの一つだ。

今日子