そろそろ鶏が卵をたくさん産む時期になってきた。12月と1月が一番少なく、2月から3月の復活祭にかけて毎日たくさん卵を産むのだ。
ちょうどいつもにわとりを買っている農家に一羽殺したて(すごい表現・・・)をもらったので、さばくことにした。
うちは丸焼きにしても2人と小さい子供には多すぎるので、さばき方を練習してももや胸肉を分けて使うことにしている。鶏を1羽さばくのはなかなかむずかしくて、最初はうまくいかなかったが、最近はなかなかコツを得ているなと自分でも思う。
間接の部分を手で折れば包丁で骨を切らなくてすむし、あとは骨にそって切り離していけばよい。こまったのは、全部肉をはずし終わったあとの骨だ。ここにはたくさんおいしい肉がこびりついているが生だとうまくとれない。
農家の人々は首や足も全部食べてしまい、残るのは骨だけだ。そう思うと捨てるのはもったいないので、スープを作ることにした。
料理の本によると、骨でとったダシは味がよく出るが栄養分は少ない。変わりに肉でとったものはスープに肉の栄養がでて滋養によいという。
私のには骨も肉もついているのでさぞおいしくなるだろうと楽しみになった。水でガラをよく洗い、セロリやにんじん、トマトや月桂樹の葉などを入れて煮始める。最初にでたアクだけきれいに除き、あとはアクがでてもとらない。この中にうまみが全部入っているからだ。塩も最初に入れてしまう。
4時間ほど煮たらあとは一晩寒いところにおいておく。そして次の日の朝表面に固まった脂肪分をとってしまう。こうすると鶏の臭みやしつこさがなくなるのだ。月桂樹の葉などは2枚はいれたほうがよい。そうしないと臭みが気になるのだ。他にセージの葉の乾燥したものもあう。
このスープはそのまま飲んでもよいし、リゾットに使ったりもする。今日はスープにポロねぎをたくさん入れてさらに1時間煮こみ、ねぎのスープを作った。中に余っていた手打ちパスタのフェットチーネを茹でて入れ、パスタスープにしてみたらおいしかった。
今日子
手作りの生ハム
豚の話はまだ続く。豚半頭のモモの部分は生ハムにするのだが、今までの3週間は塩に漬けておいた。塩は荒塩で、これだと急に塩に漬からず、肉にじわじわと塩分がまわるのだ(オリーブの実などいろいろな塩漬けはいつもこの荒塩で行う)。
そして塩が全体に行き渡った所で、今度は水に漬けて余分な塩分を抜く。終わると赤ワインで全体を洗い、殺菌する。
とくに悪くなりやすい部分は骨が見えている先の部分で、ここを十分に殺菌する。骨が腐りやすいということで、骨をのけて生ハムを作る場合もあるが、そうするとどうしても味が落ちて元来の深い味わいがでなくなるという。
次にコショウとペペロンチーノを大量に全体に刷り込み、1年間日陰で涼しい場所で、湿度が低く風通しのよい場所に釣り下げておく。
田舎の手作りの生ハムは、パルマの生ハムのように甘味の強いものと少し違う。脂肪分も少なくて、干し肉そのものといったかんじだ。塩分が強いと嫌う人もいるが、そこは各家庭によって違う。塩をたくさんにすればたしかに腐りにくいので簡単だが、私の教えてもらった農家の生ハムは塩加減が絶妙でたまらなくおいしかった。1年も待たなくてはならないが、今から楽しみだ。
生ハムができたら脂身の部分はパスタのソースに刻んで入れたりすると途端にソースがコクのあるものに変わり、料理にも幅がでるのだ。
今日子
オイル漬けサルシッチャ
1月のはじめに作ったサルシッチャ(ソーセージ)は、最初の2週間は寒くて風通しのいい場所に干しておく。そしてその都度いる分だけ焼いて食べる。まるで漫画でたくさんソーセージがぶらさがっている肉屋のようだ。
2週間ほどするとだんだん肉が乾いて干し肉のような状態になる。塩分が強いので腐らない(じっさいそのまま食べるとかなり塩っ辛い)。程よい具合に乾いたら、今度はオイルにつけて保存する。こうすると何ヶ月もおいしく食べられる。時期を過ぎるとカビも生えてくるし、肉が乾きすぎてしまうのだ。
このオイル漬けのサルシッチャは焼かないで食べる。生のまま薄く切ってサラミのように食べるのだが、これがまたおいしい。サラミとはまた違う、オイル漬けのしっとりと生のような柔らかさで、しかも生臭くない、肉の熟成された深い味わいがあるのだ。
これはおつまみには最高だし、前菜としてだしてもよい。今夜は暖炉の炭でフォカッチャを焼いて、中に挟んで食べてみた。バリッと焼けたフォカッチャに、中のオイル漬けサルシッチャがとてもよく合う。夕食でなくて、子供のおやつにもとても喜ばれるなと思った。田舎に来てこういった自家製の食べ物が家にいつでもあるというのが、金持ちとは違う、裕福な気分になるのがうれしい。しめしめと思ってしまう。
今日子