昼食のあと、家の近所を散歩することにしている。家の周りは舗装されていない砂利道が延々と続いている。そこを犬2匹、猫2匹、夫と子供とみんなで歩いていく。
毎日同じような道を通って行くから飽きるだろうと思うと、そうでもない。近所の友人は、田舎はビニール袋を持って歩いた方がいいね、と言う。
昨日は歩いて行くと洋ナシがたくさんなった木を見つけ、1つもらって食べてみる(近所の農家もので、仲良しなので盗んでいるわけではない)。形が悪くて硬いけど、味は売っているものの何倍も濃くておいしい。
ふと横を見ると、山のように冬トマトの枯れた苗がおいてある。オレンジ色に熟したトマトがまだたくさんついている!畑をきれいにして次に植える野菜の準備をするために捨てたのかもしれないけど、これは捨てるにはもったいないよね、と拾って帰る。
少し歩いて林の中に入っていくと、キノコがあり、クルミの木があり、夏にはブラックベリーが山ほどなっている。りんごの木やさくらんぼなど、おいしいものがたくさんある。
夏はこの辺りはマムシがいるので用心して歩く。蜂の巣をふんずけないようによく見て歩く。そうすると野生のアスパラガスが目に入る。
狐やヤマアラシに出くわすこともあり、そうなると一大事だ。林の奥に入ると、もう使っていない狐の巣を何個も見つけたりして、狐の子供が中にいたことを思い浮かべて楽しくなる。
こうやって食べるものを道端で見つけ、その場でとって食べたり、夕食のおかずになったりすることはたまらなくうれしいものだ。
今日子
2003年11月
ウサギ
今日近所の知り合いが来て、はいこれ、とビニールの袋を渡された。なんだろうと思って中を見てみると、なにやら顔のようなものが見える。電気をつけてよくみると、皮をはがれたウサギだった。しかも丸まんまで頭もついているのでついギエッと言ってしまった。
ウサギはこのあたりではよく食べるのだが、私は肉はオーソドックスな牛、豚、鶏以外苦手なので、正直言ってあまりうれしくない。夫と子供は食べるので、もらったからには料理しなければならない。
友人は、このウサギは飼料をまったくやらないでワラを食べてそだったから、ちょっと繊維が多いけどおいしいわよ、ととても親切だ。たしかに飼料を食べていないウサギは独特の匂いもしないし、鶏肉のような感じだ。
一番おいしいのは暖炉で炭で焼く方法だろうか。やわらかく香ばしく焼ける。しかし丸まんまで両手足をピンと伸ばした状態で炭の上をグルグルまわっていると、まるで猫の丸焼きのようだ。
他に骨ごとぶつ切りにして、オリーブオイルとニンニク、ローズマリーとオリーブの実を一緒に炒め、ワインビネガーを入れて1時間ほど煮た、カッチャトーレ(狩人風)が有名だ。フランス料理のようにいろいろなソースを使った食べ方もレストランではするが、家庭ではあとはから揚げにするくらいだろうか。
今は狩の季節なので、野ウサギなどもご馳走なようだ。しかし食べ物として見る肉と、動物として見る肉では本当にえらい違いがある。牛や豚を精製しているのを見るのは慣れたが(最初はいやだった)、自分が食用だと思っていない動物を見るとやはり躊躇してしまう。慣れの問題だろうか。
アフリカでは野ねずみをご馳走としているそうだが、やはりねずみを食べるなんてちょっとごめんである。ねずみはウサギの肉とにているそうだ。反対にオーストラリアではウサギはねずみのように思われていて、ウサギの肉を食べるなんて!とみんないやがるそうだ。場所が変わると正反対になるのが興味深い。
今日子
ウンブリアで日本食は・・・
今日は畑でカブと白菜が採れた。カブは大きくて立派だし、白菜は例年害虫に悩まされていたが、今年はとてもきれいな白菜だった。
白菜は中国キャベツとして、今年初めてこの辺で苗を売り始めた。白菜とカブは日本食が食べたくて畑で作り始めたのだが、イタリアではどうしても日本食がおいしく出来なく、いつも食べ終わってがっくりしていた。おいしく出来ない原因は、やはり水が違うからだろう。
昆布でダシをとると、昆布がきちんと広がらなく、少し苦いダシがとれる。がんばってつくっても、”なんとなく”おいしくない。このあたりの水はもともと硬質で、やかんに毎日お湯を沸かすと、だんだん5ミリくらいの厚さのカルキができてくる。前に住んでいたローマよりひどい。
他に空気が違うとか、塩が違う、など日本でパスタを食べてなんとなく違う、と思うのと同じような気になる。そういうわけで、最近日本食はほとんど作らなくなっている。特にダシを使ったものはやめて、白いお米と生姜焼きのような味の濃いものだけにしているのだ。日本食はすごく食べたいのだが、日本に帰国する時の楽しみにとっておく。
採れたカブと白菜はニンニクとオリーブオイルで1時間ほど弱火でゆっくり炒めて塩コショウをして食べた。これがカブの甘味がとても強くでてすごくおいしい。日本でもたまに味を変えたいときに試してみてはいかがだろう。
今日子
ナスのグラタン
今日はナスのグラタンを作った。ギリシャ料理でムッサカというナスと挽肉(羊や豚など)のグラタンがあるが、今日はそれを真似て牛肉でやってみた。
ナスは5mmの厚さに切って塩をふって水気を抜く。次に油で揚げるとよくレシピに書いてあるが、揚げると油が多くてしつこくなるので、私は少量の油で焼き肉用のフライパンで焼くことにしている。
挽肉はニンニクと玉ねぎの千切りを弱火で炒めたあと、強火で炒める。その際に白か赤のワインを入れて、月桂樹の葉を2枚、トマトを少し入れてまた弱火にして2時間ほど煮る。
あとは焼いておいたナスと挽肉を交互に段にしてオーブン用のお皿に入れ、オーブンで焼くだけだ。ナスが柔らかくトロッとして挽肉に混じってとてもおいしい。白いご飯によくあう。
ナスを油で揚げるといくら油をきってもオーブンで焼いた後ジワーッと油があふれてきてしまうので、これだけ気をつければうまくいく。ナス料理はイタリアの野菜料理の中でもかなり重要視されていて、人気の野菜だ。ナスだけでいろいろな一品料理ができるし、つけあわせにもパスタにも喜ばれる。
今日子
病気の時
気管支炎を起こしてしばらく寝込んでしまった。抗生物質を飲みたくなかったので休養をとってゆっくりすることにしたのだが、良くなるのに1ヶ月もかかってしまった。
イタリアでは病気の時何を食べるのかご存知ですか?イタリア人は具合の悪い時に肉を食べろとよく言う。最初は、え?肉???と思ってしまった。
しかし肉といっても焼肉のようにこってりしたものではない。香草と一緒に茹でた牛肉や鶏肉を食べる。スープも飲む。このスープはお吸い物のような役割かもしれない。肉を食べて力をつけようという考えらしい。
それにしてももっとやさしい味がよくはないかと夫におかゆを作ったら、ウッ、まずい。味がしないしぐちゃぐちゃで気持ち悪い、と言われてしまった。梅干もすっぱくてあわないらしく、暴力的だと言っていた(夫は日本食大好きで、納豆も刺身も白いご飯もなんでも食べるのだが・・・)。それでも最近はおかゆにも慣れて、上にオリーブオイルをかけて食べるようになった。見ていて気持ち悪い。
そういえばイタリア人はなんでもアルデンテが好きで、お米もパラッと芯があるくらいで食べる。下痢の時などはジャガイモとお米を茹でたものに塩とオリーブオイルをかけて食べる。
今回1人でおかゆを作ってしみじみと食べていたら、知り合いの70歳のおばちゃんから電話があった。体調悪くて何を食べているのときかれたので、お米を煮たものと答えると、「まあ、かわいそう、そんなおいしくないもの食べて!ジャガイモになさい、ジャガイモに!」と言われてしまった。やはり外国人との意思の疎通はむずかしい。
今日子