1月に豚を買った際に、コーティケという、豚の皮を冷凍しておいた。この皮は脂身をとって使うのだが、豆との相性が非常に良い。煮るとゼラチン質でやわらかく、味もよく出るのだ。
今日は豆を塩で柔らかく煮た。そしてニンニクとオリーブオイル、コーティケを小さめに刻んだもの、トマトを最初に炒め、ローズマリーを入れて香りをつけたものに、豆と煮汁を入れてもう一度1時間程弱火でよく煮る。
豆に豚のうまみがよくでていてとてもおいしい。お皿に熱々をとってオリーブオイルをたらして食べると、しつこさをオイルが消してくれてよい。
煮物にブイヨンや他のダシを入れなくても、豆の味と豚とトマトのうまみで本当においしくできる。
コーティケは昔は貧しい農家でよく食べていたものだが、今では店でもあまり見かけないし、捨てる人もいるものだ。しかし味はとてもよく、独特の舌触りが豆をつるんとのどごしよく食べさせてくれるので、捨てるにはもったいない。
豆は他にソーセージや豚の三枚肉と一緒に煮たりして、ボユーム満点の一皿になるのだが、これはおいしいけれど何かのパーティや特別な時にお勧めする。
豆を塩で煮たものは、砂糖で煮たものよりたくさん食べられるし、箸休めのつまみというより主役をはれる一品だ。
今日子
2004年03月
食事のペース
昨日会ったイタリア人に、日本人は食べるのが遅いので困るといわれた。
・・・、たしかに、イタリア人は昔からまずしくてお腹がすいていたので、パスタやピザはいただきますの後いっせいに食べるものだった。お腹がすいているのにちょこちょこと食べている場合ではなかったのだ。それにゆっくり時間をかけて食べていたら、パスタはのびてピザは冷えて固くなってしまい台無しになる。
日本人がよくお酒を飲みながらいろいろな種類のものを時間をかけて食べのは、イタリア料理には合わないようだ。もちろんイタリアでもワインを飲みながら食事をするが、あくまでも食事が主体で、ワインは食事をおいしく楽しくするものとなっている。
私も夫も早食いで、イタリア料理にはいいのだが、日本に行ったときに時々苦労する。寿司屋などに行って、前に出されるものをせっかくだから握りたてを、と置かれたものをすかさず食べていると、となりでゆっくりおいしい日本酒を味わいながら食べている友人とペースがあわなくなる。
そしてしまいには知人の3倍くらいは食べてしまい、食べ過ぎでどうにもこうにもならなくなる。夫などは、僕の前でだけすし職人がせわしなくせかせかとすしを握ると言う。
反対に日本人と一緒に食事をすると、彼らはカルボナーラを食べるのに30分もかかって、自分たちは次のセコンドピアットまで待たなくてはならない。その間、することが(食べるものが)ないのでどうでもよいパンなどをひたすら食べてしまい、よけいなところで食べ過ぎて肥満の原因になってしまう。
一緒のペースで食べるというのは本当にむずかしいものだ。
今日子
オッソブーコ
オッソブーコというのは、牛の足を骨ごと輪切りにしたものだ。骨の髄を食べるので、最近では狂牛病騒ぎでみんな食べるのを嫌がる(それでも危険ではないという人もでてきたが)。
もともとはバローロ地方で食べていたが、ミラノ料理でも有名だ。ミラノでは白ワインで1時間程煮てミラノ風サフランのリゾットと一緒に食べる。リゾットに骨の髄を入れたりして、リゾットにとてもいいダシがでる。
私は人参、セロリ、タマネギ、にんにくをよ~く炒め、トマトを少しいれ、強火で焼きめをつけたオッソブーコを赤ワインたっぷりで煮る。香草に月桂樹の葉を2枚入れる。
4時間程煮ると肉がとてもやわらかくなり、赤ワインにすばらしくおいしいダシがでる。4時間経ったら肉だけ取り除き(柔らかくてくずれやすいので、そっとのける)、残った野菜と赤ワインをミキサーにかけ、もう一度強火で煮詰める。普通のビーフシチューのように小麦粉を茶色く炒めてブラウンソースをつくらないが、野菜たっぷりでとろみがつくのだ。
骨の髄はゼラチン質でツルンとしていて舌触りがよい。残ったソースは次の日にパスタに絡め、パルメザンチーズをたっぷり入れて食べるととてもおいしい。
私のところは農家が自宅用に飼育している子牛を買っているのであまり狂牛病の心配をしていないが、やはりレストランでどこの肉かわからないものを食べるのは避けた方がよいかもしれない。というわけで今では貴重になったオッソブーコ。どこの国でもこの名を使うので、イタリアのものだろう。
今日からヨーロッパは夏時間だ。毎年3月の第4日曜日に時間が長くなる。これからは日も長くなって夏がはじまる。そろそろ夏用野菜の畑の計画をたてなければ。
今日子
農家のオリーブオイル
昨日のメッサッジェーロ新聞で面白い話があった。最近ローマで流行っている泥棒の話だ。なんと、農民の格好をして農民の言葉を使い、農家のオリーブオイルだと言って5リットル缶を売りにくるのだ。
そして高い値段で缶を売りつけるのだが、中は水か泥だという。
こんな商法がどうしてまかり通るのかというと、やはりイタリアでも大きな都市では農家で直接採れるオリーブオイルというのは貴重だからだ。
私もローマに住んでいたら直接農家から買うとことなどなく、スーパーで市販のものを買っていた。
ではBUON'ITALIAがローマで成り立つかと言われれば、そうでもないのだが。やはり田舎に別荘を持っていたり、親戚が住んでいたりでおいしい農家のオリーブオイルを分けてもらえる人も中にはいるからだ。
いずれにしても、農家のオリーブオイルはスーパーでは手に入りにくく、市販のものはたいていがイタリアで瓶詰めされたものと書いてある。
他の国から持ってきたオリーブオイルをイタリアで詰めてある、というものをあたかもイタリア産のものだというふうに売っている。本当にイタリア産のものはたった40%しかないので、こういった農家のオリーブオイルという名前にだまされてしまう人もでてくるのだろう。もしそういった怪しい人が来たら、まず中身を見せてもらうにこしたことはない。
今日子
フェットチーネと野生のアスパラ
今日は野生のアスパラガスを探しに家の周りの林を回ってみたが、ここのところ急に寒くなったのでまだ生えていなかった。
しかし店頭にはもう野生のアスパラガスが並んでいる。うちの近所では片手に一握りで1000円程だが、少しいったトーディというきれいで有名な観光地では一束16ユーロ(2000円くらい)はする。
せっかく来てくれた友人のためにぜひ野生のアスパラを食べてもらいたかったので、買うことにした。
今日は生パスタ、フェットチーネを使って作ってみた。アスパラは茎がパキッと手で折れるところまでが火を通してもやわらかくなる。半分くらいは固いので、残しておいてパスタをゆでる前に固い部分だけお湯にほうりこむ。するとお湯にアスパラの強い匂いがつき、そのお湯でパスタをゆでるとパスタにまで香りが移るのだ(アスパラはパスタを入れる前に引き上げてしまう)。
この固くて食べられない部分は、別にトマトのソースなどに入れて香り付けに一緒に煮てもよい。
そしてアスパラの柔らかくて食べられる部分は、フライパンににんにくとたっぷりのオリーブオイルを入れて弱火で炒め煮にする。塩はお好みでだいたい小さじ一杯入れ、途中パスタのゆで汁をお玉に1杯程入れておくと柔らかくなる。
生パスタはさっと茹でて、柔らかくなったアスパラの中に一緒に入れて和える。一緒にパルメザンチーズをたっぷりと、それから生のオリーブオイルをさっとひとかけまわし入れて一緒に和える。これで出来上がりだ。
野生のアスパラガスのほろ苦い味と卵のパスタの柔らかい味がとてもよくあう。この味はやはりこの季節だけの貴重な味だなあとつくづく思う。