うちの近所はワイナリーが結構たくさんある。中でも一風変わったレ・ポッジェッテは、看板はないし、舗装されていない砂利道を延々と車で行く(道もひどいもので、ワインを買いに行く代わりに車を買わなければならない羽目になりそうだ)。
どんどん森が深くなって、毎回道に迷ったと思い、毎回同じ民家のおばさんにワイナリーはどこか訪ねてしまう。まわりにまったく民家のない、まるでシャーロックホームズのドラマに出てきそうなへんぴな場所だ。
建物も壊れかかっていて、ここがワイナリーかと思うような場所に、100年くらい前に時間がスリップしたようなおじさんとおばさんがいる。全部で4人しかいないワイナリーだが、実はワイン愛好家には有名な場所なのだ。
1年前にも何かの有名な雑誌に、おいしいワインを作るところとして紹介されていた。貯蔵庫にはいると樽がたくさんならんでいて、ひんやりしていて気持ちがよい。そして何よりもブドウのいい香りがする。
他には息子の幼稚園の友達の父親が、フランス人でワイナリーをやっているのだが、最近サッカーの中田選手が彼の名前で売るといって大量にワインを買っていった、という。
いずれにしても、ワイナリーでワインを買うとおいしいワインが本当に安く手に入る。今日買ったものも、一番高くて15ユーロだった。これが店に入ると3倍、レストランで5倍、日本で10倍近くの値段で売られるのだから、すごい。こういう所で自宅用にたくさん買っておくと地元ワインを気軽に楽しめてとても良い。
今日子
2004年03月
グワンチャーレ
1月に買った例の豚の、グワンチャーレという頬の肉のベーコンができあがった。グワンチャーレは脂身が多く、この辺りの人は薄く切って生でパンと一緒に食べる。
バターのかわりと言ったところか、パンに脂肪分が一緒になってとろけるようだ。脂が脂っぽくしつこくないので、生でも普通に食べられる。
他に有名なトマトとベーコンと玉ねぎのパスタ、アマトリチャーナは、以前書いたがアマトリーチェというアブルッツォの小さな街のオリジナルで、そこの人はアマトリチャーナに使うベーコンは必ずグワンチャーレで、と言う。
オリーブオイルの代わりに豚のラードで玉ねぎを炒め、グワンチャーレを角切りにしてじっくり弱火で炒める。まさに豚のおいしい脂肪のパスタだ。
こういったカルネ・セッカと呼ばれる肉を干したものは、必ず12月、1月の寒い時期に豚を殺して作る。頬肉から首の肉、腹の肉、もも肉など、ほとんど干し肉に使い、ソーセージも作り、焼いて食べる部分はロースと三枚肉以外あまり残らないものだ。
反対に夏に豚を殺す場合は干し肉にはしないで、すべて焼いて食べることにする。暑い時期には干しても腐ってしまうからだ。
うちと同じ豚を半分にわけたもうひとつの家族は、1月からもう全部肉を食べてしまったらしく、また昨日もう1頭解体していた。たしかに人数は我が家より多いが、それにしてもすごい速いペースで驚いてしまう。
6月には腹の肉で作ったいわゆるベーコンもできるので、とても楽しみだ。これでカルボナーラを作ると最高においしいのだ。
今日子
春の訪れ
だんだん春が近づいてきたようだ。ここのところオリーブの木の剪定も行われ、オリーブ畑のあちこちで声がする。この切ったオリーブの枝は、パスクワ(復活祭)に毎年教会で使うのだ。枝を燃やすと油を含んでいるのがよくわかる。バチバチと音をたてて油特有の匂いと煙をだす。
そしてもう一つの春の訪れは、野生のアスパラガスが芽を出し始めたことだ。野生のアスパラガスは、その名の通り藪の中に自生している、ほろ苦くてかすかに甘味のあるものだ。見た目は普通のアスパラよりずっと細く、ヒョロッとしてつくしのようだ。色は深い緑か、赤紫いろと深緑のまじったような色だ。
このアスパラは周りにトゲトゲの葉があり、刺さると痛い。そしてこの時期になるとちょうど冬眠からさめるマムシがいるので、藪の中では気をつけなければならない。
近所の人は皆それぞれ自分のないしょの場所があり、あまり人に教えたがらない。そして雨が降った後にニョッキリでてくるアスパラを目指して、朝早くから出かけるのだ。年金生活の夫婦などは丸1日かけてたくさん採ってくる。
野生のアスパラを食べると、普通のアスパラの味が水っぽく感じるほど、濃い。あまり濃いので、食べ方もパスタや卵と一緒に食べる。
この時期から7月にかけて、雨の降る回数にもよるが、4ヶ月は楽しめる野菜だ。食べ方はその都度紹介していきたいと思う。これからたくさん春の野菜がでてくると思うとワクワクする。
今日子
ナスとパルメザンチーズ
今日はナスとパルメザンチーズのグラタンを作った。メランザーネ アッラ パルミジャーナという。メランザーネはイタリア語でナスのことだ。
ナスは大きいもの3つを5ミリ程度の厚さに切って塩をふり、2、3時間おいておく。こうするとアクがでてしんなりする。
このあと油で揚げる人もいるが、かなり油っこくなるので、グリル用のフライパンを使い、少量の油で焼く。
別の鍋にトマトソースを作っておく。市販のホールトマトでもいいが、やはり生のトマトを使ってニンニクとオリーブオイルで煮詰めるのがよい。
できたらパルメザンチーズをたっぷりおろし、ナス、トマトソース、パルメザンチーズの順に4段くらいにかさねてオーブン用の深めのお皿にいれる。あればバジリコの葉も段の中にいっしょに入れる。モッツァレッラチーズを一緒に入れてもおいしい。
そして200度のオーブンでグツグツとなるまで40分から1時間焼く。するとチーズの焼ける香ばしい匂いがしてくる。
できたてを食べるのではなく、半日置いておくと味がしみてよい。ナスがやわらかくてトロリとしていて、油とナスとチーズの相性が抜群だ。
オーブンものはあまりアツアツだと口の中に入れたときにハホハホとなってあまり味わって食べられない。それでイタリアの人は、よくしばらく置いて冷めたものをもう一度調度よい熱さに温めなおしてから食べる。
チーズが溶ける程度に、しかし沸騰しそうな程熱くはしない、というのが一番いいというのだ。オーブンから出したてのを食べるのが好きな日本人がこの料理を食べて、冷めていておいしくない、と変な顔をするのをよく見るので、考え方の違いが面白いなと思う。
今日子
家庭菜園
最近となりの家は鉄工場の仕事がうまくいってか、とても羽振りがよい。
しかし驚いたことに、いつも一生懸命やっていた家庭菜園をやめるというのだ。どうしてかたずねると、面倒くさいし時間はかかるし、お店で買った方がよいと言う。畑があった部分はプールにするそうだ。
・・・、あんなにおいしい野菜を作っていたのに、今までたくさん出来た野菜をよく分けてくれていたのに。そうか、家庭菜園は貧しかったのでやっていたが、野菜を買うお金ができたのでもういらないのだ。
なんとなくショックを受けてしまった。私は田舎に引っ越して、野菜を自分の手で作ることがどんなにうれしいことか知っている。大きな街で暮らしていて、どんなに採れたての野菜が食べたいと思っても手に入らなかった。何かを1から育ててできたものを収穫して食べるという喜びは、いい表せないほどのものだ。
それをあっけなくやめてしまうのは私にとっては勇気がいることだ。これから先、もし都会に戻ることを考えると、まず最初に思うのは飼っている大型犬でも広い家でもなく、畑のことなのだ。
これからおとなりには採れたての野菜がなくなるので、私がおすそわけすることにした。
サラダ菜を持って行くと、「まあ、ありがとう。とってもうれしいわ。だってうちにはもうこんなおいしい野菜はないからね。」と感謝された。なんだか立場が逆転したようで変な気持ちになってしまい、やっぱり畑があった方がいいんじゃない?と聞くと、そうね、でもキョーコがいるから、と言われてしまった。
今日子
