buonitaliaのblog

2004年04月

豚の腹を解体すると、長さ3、40センチの大きな脂肪のかたまりがある。左右両方にあるのだが、これがラードの原料になる。

ラードはいろいろな料理に使える。中華料理にはよく使うけれど、イタリア料理にはオリーブオイルがあるので使わないかと思うと、そうでもない。

まず普通にトマトソースを作るとき、オリーブオイルの代わりにラードを使ったりする。アマトリチャーナなどは必ずラードを使う。ソースに豚の味がよくでるからだ。

それから家でピザを焼くとき、ピザの容器にくっつかないように、それから下の面が焼けた時に香ばしくパリッと焼けるように使う(特に後者が重要。くっつかないためなら、オリーブオイルでもかまわないが、これだとパリッと香ばしくならない)。

他に羊の骨付き肉を炭火で焼く時に、最初にラードを溶かしてローズマリーをたくさん刻んだものを混ぜ、焼く前にまんべんなくその液体をぬる。ラードは肉にかかって冷えると、すぐに固まって白くなる。それを炭火で焼くと、何もしないで焼いた時よりも表面がパリッとしてずっと香ばしく、羊の臭みがいい具合に抜けて食べやすくなる。

それからお菓子にも使える。タルト生地を作るとき、バターの代わりにラードを使うと、信じられないかもしれないが、バターよりサックリと、そしてサッパリと焼けるのだ。豚の脂なんて聞いただけでしつこくて胃がおもくなりそう、と思われるかもしれないが、不思議と軽くて香ばしいものができる。

洋梨のタルトやオレンジを薄い輪切りにして砂糖で煮たものを、小麦粉とラード、水、砂糖をこねてのばした生地の上にのせてオーブンで焼くと、乳製品を使っていないのにすばらしくおいしいケーキが焼ける。この生地はもちろん他の果物(リンゴでもよいし、モモでもよい)でもいろいろなバリエーションが楽しめて良い。何よりも、アトピーで卵や牛乳が食べられない人には願ってもいないお菓子だと思う。無理にアトピー用の食品を買うより、どれだけおいしくて楽しいおやつになることか。

良質のラードなら、これだけいろいろな料理に使える。ぜひ日本でも試していただきたい方法だ。

今日子



そろそろ空豆の季節になった。こちらでは空豆は豆が大きくならないうちに収穫して、若くてやわらかいものを生で食べることも多い。

食卓にさやごとだし、羊のチーズ、ペコリーノと一緒に食べるのがみんな好きだ。私は残念ながらペコリーノが嫌いなので、別の牛の乳のチーズと一緒に食べるのだが、チーズと食べるのにはそれなりに理由がある。

空豆を生で食べると、飲み込んだ後口の中に苦みが残る。この時にチーズを食べるとこの苦みがスッと消えていく。そしてチーズのしつこさが少し口に残る。するとまた空豆のさっぱり感が欲しくなり、また空豆を口にする。という繰り返しなのだ。にわとりが先か、卵が先かではないけれど、いつまでも食べ続けてしまう。同じことがチーズと洋梨にも言える。チーズをさっぱり、洋梨をこってりと食べられるのだ。

空豆の話にもどるが、他には同じ時期にでるグリーンピースと一緒に鍋で煮るのもおいしく食べられる。深鍋にニンニクとオリーブオイルを炒め、タマネギのみじん切りを少々(入れなくてもよい)弱火で炒める。そこに空豆とグリーンピース(生)を半々ずつたっぷり入れ、塩をして弱火でコトコト煮る。水は入れなくても野菜からでる水で柔らかくなる。最初から強火でどんどん炒めると、水気が飛んでしまい柔らかく煮えないので、それだけ注意することだ。

ただ塩で味付けしただけだが、グリーンピースと空豆の独特の甘みとほろ苦さがまじってとてもおいしくできる。小鉢にちょっとではなく、お皿にいっぱい食べる、ボリュームもある料理だ。ついでにお腹のコンサートも始まってしまうのだが、この季節ならではのすてきな一品だ。

今日子



ナスとリコッタチーズのオーブン焼き:シチリアの料理。シチリアは、ギリシャやアラブ、フランス、ドイツなどの様々な国に支配されてきたせいか、いろいろな国の料理が混じっていて面白い。

言葉も、アラブ語かと思うような方言で、普通のイタリア人にもわかりにくい。私などは、街でシチリア人の団体が話しているのを聞いてイタリア語と思わなかったのだが、あとでイタリア人と聞いてショックを受けたことがある。

ナスやピーマン、トマトがとてもよく育つ温暖な気候で、それらがアラブの料理とマッチしたらしく、シチリア料理はアラブ料理と似ていると言われる。一年中温暖で、夏の猛暑でも夜に涼しくなる気温の変化が赤や黄のピーマンの生育にとてもいいそうだ。日本のパプリカからは想像もできないような大きくて目の覚めるような色のものができる。

私の知り合ったイタリア人でも、シチリア料理が一番好き、という人は結構多い。

ナスとリコッタチーズのオーブン焼きは、ナスを5ミリ程度の薄切りに塩をふって重しをし、アクをとる。水がたくさんでたら、少量の油で一枚づつ裏表をサッと焼く。

中に詰めるリコッタチーズは、シチリア地方の塩が入った固めのリコッタチーズを使うのだが、ない場合は普通のリコッタチーズでもまったく問題ない。

ズッキーニ1本とタマネギ半個、赤ピーマン(中)半個を生のままミキサーにかけてドロドロの状態にし、少量のオリーブオイルで水気が飛ぶまで炒める。そしてリコッタチーズ500gと和え、塩を少々ふっておく。

火を通しておいたナスにリコッタチーズをのせてクルッと巻き、オーブン皿に敷き詰める。

トマトの種と皮をとったものを角切りにし、タイム、オリーブの実、オリーブオイル、塩をして混ぜたソースをナスの上にかけてオーブンで30分ほど焼く。

半日休ませると味が落ち着いてよい。ナスのとろりとした柔らかさと、リコッタチーズのフワッとした柔らかさと乳製品独特の濃厚な味が絶妙の、すばらしい組み合せだ。前菜にも、付け合わせにもいい一品だ。

今日子



毎年4月の最後の週末は、近くの村で大きな出店がでる。農業で使うトラクター(年代物から最新のものまで)や、台所用品、暖炉、おもちゃ、洋服などいろいろな店が並ぶ。しかし普段の市場と違うのは、夏用のトマトやナス、ピーマン、バジリコなどの苗を売る店がでることだ。

家庭菜園をやっている人は、ほとんどみんなここで夏野菜の苗を買う。

私も毎年ここにでている出店で買うのだが、今年はトマトの苗を少し多くしてみた。種類は3種類で10本づつ、冬の保存用にメッザサンマルツァーノと言われる、普通のより短めの種、他にパキーノと言われる、ナポリ近郊が原産のミニトマトより少し大きめのトマト(このトマトは香りも高く、甘みもミニトマトのように人工的でなくとてもおいしい)。そしてローマの市場では見つけるのがむずかしくなった、「おいしい」普通の丸い大きなトマト。これはうちの畑のトマトの中でも一番評判の良いトマトで、お米を香草と一緒に詰めてオーブンで焼くととてもおいしい。しかしトマトがおいしくないと、まったくひどい出来になる、むずかしい(?)料理なのだ。

それから大好きな大きくてうす紫色のナス。これがまた他のナスよりもとろけるように甘くて香りが高い。この苗を6本。日本でパプリカと呼ばれる大きなピーマンの苗を6本。しかしピーマンはもともとみんな緑色で、熟すにしたがって黄色、赤と色が変化していく。私の畑ではやはり南の方の熱い気候とあわないのか、せいぜい黄色くらいまでしか熟さない。それでほとんど緑色のものを食べるのだが、これはこれで採れたてをオーブンで焼いたり、中にリコッタチーズなどを入れて油で揚げたり、ひき肉を詰めてオーブンで焼いたり、いろいろな料理に使える楽しい野菜だ。

ズッキーニやカボチャ、インゲンも植えるが、これらは種から植えてもすぐに発芽するので、安い種を買ってくることにしている。

これで夏野菜の苗は準備できたのだが、肝心の畑が雨続きで湿っていて、まだ耕して肥料(牛の糞)をまぜることが出来ていない。今日は久しぶりの快晴だが、これが少し長く続いてほしいものだ。

今日子



今日は畑で育てているアーティチョークの初ものが採れた。例年より1、2週間早い出来だ。

アーティチョークは採れたてだと味がずいぶん違う。切った直後からどんどんアクがでて黒くなっていくので、すぐに食べると火もあっという間に通るし、瑞々しくて柔らかい。収穫後、市場にでてからしばらくたったものとでは雲泥の差がある。

どうやって食べるかはいろいろあるが、採れたてを味わうには油で揚げるのが私は好きだ。

固い花びらの部分をきれいにのけ、上1センチを切り落として8つに切る。中にひげのようなものがあるのは取り除く(これは育ち過ぎの物や古くなったものにでてくる。食べるとおいしくない)。

そしてレモン汁をかけて塩をぱらっとふる。レモン汁をかけると、切っている間にアクですでに黒くなっていたものもぱっときれいな黄色にもどるから不思議だ。

そして小麦粉だけまぶしたものでもいいし、卵をほぐしたものにつけて天ぷらの衣のようにしてでもいいが、オリーブオイルでカラッとあげる。

揚げ立てはホクホクしてアーティチョーク独特の香りがフワッと口の中に広がり、やめられなくなるおいしさだ。日本の野菜のどれかに例えて言うなら、タラの芽とよく似ていると友人が言う。

タラの芽も、採れたてのものはずいぶん味が違うが、やはり採れたてというのはすごい贅沢感があっていい。

これからしばらく採れるので、普通家庭で食べるようなアーティチョークのパスタやリゾットも紹介したい。

今日子



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