七面鳥を飼っている農家は多い。肉はもちろんおいしいが、時々は卵も食べるからだ。
七面鳥の卵はニワトリのよりすこし大きめで、目玉焼きやゆで卵にすることはあまりない。普通は卵を産む前の段階で食べてしまうから卵を食べる機会はあまりないらしい。
しかしたまに卵ができると、皆手打ちパスタに使用する。なぜ普通に食べないかと聞くと、あまり明確な答えは返ってこない。慣れていないからとか、味は好きずきだからと言う。
それが手打ちパスタにすると、小麦粉とよくなじんでパスタがよくのび、本領を発揮するという。色もニワトリのより濃くて黄色がきれいだし、味もパスタだとなんの違和感もないそうだ。
他に食用に使う卵は、アヒルの卵だ。これも人によって好き嫌いはあるが、アヒルの卵はニワトリより濃厚で卵焼きや目玉焼きにする人もいる。アヒルは肉も脂肪がかなり多いので、おいしいが冬だけ食べるという家庭もよくある。
農家の鳥小屋には他にもウズラやまんまるで灰色のボールのような鳥、ホロホロチョウなどアヒルとニワトリの間の子で恐い顔をした鳥など、農家の人は本当にいろいろな鳥やその卵の味を楽しんでいる。
明日から1ヶ月近く日本に帰国するので、ウンブリア日記はしばらくお休みすることになります。
今日子
2004年05月
カッチャトーレ
カッチャトーレというのは猟師風という意味でいろいろな肉をニンニクとローズマリー、ワインビネガーかワインで煮込んだ物のことをいう。
もともとはワインビネガーでパンチの効いた味をだすものだが、今は裕福になったのでワインを使うというところも多い。
主に鶏肉、ウサギの肉、野鳥、子やぎ、イノシシなどの肉を使う。いのしし以外はいずれも丸ごと使うのが一般的だ。
このカッチャトーレを作る時に、重要なのは最初に鍋でぶつ切りにした肉を、油をしかないで強火で焼き、水分を飛ばしてしまうことだとこの辺りの主婦は言う。
そんなに水がでるものかと思いつつ、やってみるとコップ一杯分くらいの水がでた。この方法は肉の臭みがとれて水っぽくならないのでいいと言う。
そのあと他の鍋にニンニクとオリーブオイル、ローズマリーをたっぷりいれて火のとおった肉を強火で炒め、白ワインカップ1とトマトを小さめのを2個程入れて弱火で1時間程煮込む。圧力鍋で柔らかくする方法もあるが、それは好きずきだ。
私が知っている肉の調理法といえば、最初に熱々のフライパンに油をしいて肉の表面をジュワッと焼き、おいしい肉汁をでないようにしてしまう、というのがお決まりだったように思うが、この方法はその考えに反しているなあと思う。
日本でこの方法で作ったことがないので、肉のタイプが違うせいかどうなのかよくわからない。
いずれにしても、できたものは肉にトマトの味とワインの味がしっかりついていて、確かに水っぽくない。その分きもち肉がパサッとしているかもしれない。脂肪分がたくさんあって柔らかい肉が好きな人はおやっと思うかもしれないが、私は最近こういった野性味あふれる味もとても好きで、日本にいた時と味覚がかわったかもしれないなと思う。
今日子
ポルケッタのパニーノ
朝買い物に行ったついでに3歳半の息子を公園で遊ばせた。今水疱瘡で幼稚園に行けないため、誰もいない公園で少し遊ばせることにしたのだ。
しばらくするとお腹が空いてきたので、公園の前にとまっているポルケッタ売りの車まで行ってみた。
ポルケッタは子豚の丸焼きで、だいたい小さい豚で30キロ、大きいと60キロくらいの豚を専用のオーブンで頭からしっぽまで丸焼きにする。内蔵は取り除き、塩、こしょう、ローズマリー、ペペロンチーノ、そして野生のウイキョウの葉をたっぷりお腹に詰め込む。
焼いたものは肉がとても柔らかく、大人の豚に比べて脂肪も少ない。味付けは塩だけなので肉のおいしさがよくわかり、いたってシンプルな味だ。
薄く切ったポルケッタを、何の変哲もない、外側が固くてバリッとしたパンにはさんでもらう。パンが乾燥しているが、日本で売っているバターやマヨネーズをつけたり、レタスやトマトを一緒にはさんだオシャレなパニーノのようにはしない。
豚肉はただ切ったのではなく、外の皮のバリバリした塩っけのあるところを縦長に細くきったもの、脂の部分、コショウや香草の効いている部分を均等に入れてくれるので、シンプルな中にもいろいろな歯ごたえや味があって本当においしい。
ただそれだけのパニーノだが、ただひたすら豚肉とパンの味が口の中に広がる。街中だと散歩の最中に、この辺りでは主婦たちがお昼ご飯にと買いにくる。
やはりこういうものがあるからイタリアでは日本ほどファーストフードが流行らないのだろうなとつくづく思う。晴れた日に公園で頬張るポルケッタのパニーノというのは実にいい。
今日子
嫌われている動物
ここのところ近所の家畜が被害にあっている。ニワトリや、アヒル、子猫などが動物に食べられてしまうのだ。
なんの動物か誰も見たわけではないが、アヒルが全部食べられていたりするのでたぶんキツネか何かだろうと思われる。
あとは林に住んでいる大きなネズミが子猫を食べてしまったりというのもある。
ニワトリはタカに持っていかれてしまったりということもある。みんな春になって子供が生まれたので、エサをたくさん確保しなければならないのだろう。しかしニワトリやアヒルは農家の人にとって大事な食料なので、特にキツネはとても嫌われている。私が時々見かけてかわいいと大喜びするのとはわけが違うらしい。
もし農家の人がキツネをつかまえようものなら即座に銃で撃ち殺されてしまうのだ。
他に嫌われている動物に、ヤマアラシがいる。ヤマアラシはもう少しするとできるジャガイモを山ほどたべてしまうのだ。ヤマアラシは以前夜家の前で見かけたのだが、体についている長いトゲトゲが夜の闇に銀色に光ってそれは不思議な生き物だった。大きさも猫よりちょっと大きいので、ハリネズミより迫力がある。
ヤマアラシを畑から守るのは以外と単純で、彼らは30センチぐらいの柵があると、それをピョンと飛び越えることができないらしい。
ヤマアラシやハリネズミは昔から肉がとってもおいしいと言われている。どんな肉なのか想像もつかないが、夫が子供の頃、ローマで拾ったハリネズミをかわいがっていたら、近所のおじさんにうまそうだなあと言われて怖くなったと言う。私は誰か食べている所をみたわけではないが、近所の人も皆一様においしいという。これからも食べる機会がないことを祈るが・・・。
今日子
良質の油
普通に家庭用のオーブンでピザを焼くとき、おいしく焼くコツを考えてみた。家庭用のオーブンは薪のオーブンに比べて温度が低いので、焼きが甘くならないようなんとかしなければならない。
そこで役に立つのが油だ。鉄板にラードをたくさん塗る。こうするとちょうど生地が油で揚げた状態と同じになり、カリッと香ばしくなる。
フォカッチャの場合は、下にラード、上に大量にオリーブオイルをかけると香ばしくなる。これが、一般的にレストランやターボラ・カルダと呼ばれるセルフサービスや切り売りピザのピザになると、予算の関係でどうしても質の良いオリーブオイルを使えない。質の悪い安物のオリーブオイルやラードを使うと、必ず油臭くておいしくない。
イタリア人が油にとてもこだわるのは、昔からの伝統で食事にたくさんの油を使うので、質の悪い油を使うと体調がおかしくなることを経験でしっているからなのだろう。
ピザを食べて胃の調子が悪くなったりなかなか消化できない場合というのは、必ず油が悪いか、イースト菌を大量に使って生地を短時間でしか発酵していないものになる。
というわけで、家庭で時間をかけて生地を発酵させ、(最低5時間以上、イースト菌は小麦粉700gに対して12g程度で通常の半分)ちょっと値段が高くても良質のオリーブオイルをたっぷり使ってピザを焼いてみるのも、たまにはいいかもしれない。
今日子