暑くなって庭のバジリコが大きくなった。きれいな緑で、葉も丸く肉厚な感じで見るからにおいしそうだ。
うちでたくさんできると必ず作るのが、”ペーストジェノベーゼ”だ(イタリアではペーストと言えばジェノベーゼと伝わるのだ)。松の実とたくさんのバジリコ、おいしいオリーブオイルとパルメザンチーズで作る。
こちらでは大理石の小鉢とすりこぎでバジリコを擂るのだが、最近では皆ミキサーで作ってしまう。だがミキサーで作るとバジリコやオイルに熱が通ってしまうのでやはり手で擂るのが一番だ。
そこで使えるのがイタリアにはない便利な道具、日本のすり鉢とスリコギだ。大理石のより擂りやすく、ミキサーのように熱も加わらないのでとてもよい。
作り方はバジリコをたくさん水洗いしてよく水を切ったあと、茎の部分を入れないですり鉢でする(茎が入るとゴロゴロして擂りにくい)。
だんだんきれいに細かくなってきた所で松の実もカップ半分程入れて、ペースト状になるまでよく擂る。それができたらオリーブオイルをたっぷりカップ4分の3程入れ、パルメザンチーズを好みでカップ半分程度、塩を入れて混ぜる。
よくレシピにバジリコを擂りながらオリーブオイルを少しずつ足していくとあるが、何度か試してみたところ、なぜか後で入れた方がおいしいような気がする。きっとすり鉢だと大理石と違い擂っている最中に多少は熱が入ってしまうからなのかもしれない。
できたものはパスタにからめたり、ミネストローネを食べる前に一さじ落としたり、サラダのドレッシングにしたりいろいろと使える。ジェノバの方では茹でたジャガイモとインゲンも一緒にパスタにいれたりする。バジリコが少ない時はイタリアンパセリを一緒に入れてもまた違ってよい。
たくさん作った場合はパルメザンチーズとオイルを入れないで冷凍にしてもよい。1ヶ月くらいは味も変わらないでおいしく食べられる。これがあると暑い夏の食事もよりおいしく食べられる。
今日子
2004年06月
フィンランド
今度の東京への旅はフィンランド航空を使って行った。ヘルシンキで乗り換えの便で、フィンランドは東京からのヨーロッパ最短距離なのだそうだ。ローマからヘルシンキまで3時間15分、ヘルシンキから東京まで8時間半から9時間と、直航便で行くのとあまりかわらない。値段も他の航空会社に比べて200ユーロも安かった(日本で買うチケットだとどのくらいの値段かはわからないが)。
東京からイタリアに帰る途中にヘルシンキに4日程よってみたのだが、この時期の北欧はすずしくて本当に気持ちがよかった。
ホテルの人にイタリアに住んでいるというと、まあ、なんてうらやましいんでしょう、としみじみ言われた。フィンランド人のその人にとって、イタリアはとても魅力的な国なのだそうだ。
気候に恵まれていて食べ物も豊富でおいしいイタリア。そしてなによりも太陽の国のイタリア。昼でも暗い、長い冬と厳しい寒さのフィンランドとはずいぶん違う。
イタリアという国は日本人だけでなくさまざまなヨーロッパの国の人々からみても魅力的な国なのだなあと思った。
食べ物は長いことオリーブオイルといろいろ種類の野菜中心の生活に慣れていたので、バターをたくさん使った料理や脂っこい魚をレストランでずっと食べていたらちょっとつらくなってきた。
私はバターが大好きだし、毎回でてくるジャガイモ料理もモリモリ食べるのだが、いったいフィンランドの家庭料理はまたレストランと別なのだろうかと興味がわいた。
今日子
クルミのリキュール
昨日イタリアの我が家に帰り着いた。すっかり夏になって庭には花が咲き乱れ、まわりの麦畑は穂が金色になり、もう収穫してしまったところもあるくらいだ。
6月24日はクルミのリキュールを作る日と決まっているので、さっそく近所のおばちゃんと一緒に作ってみた。なぜ24日かというと、クルミがまだ熟していない緑で柔らかい状態のものを使うからだそうだ。この日を過ぎてしまうと、固くなって包丁で殻ごときることができないという(1日くらいのびても変わらないと思うが)。リモンチェッロだったらいつでも好きな時にできるけど、これは季節感があるでしょ、という。
作り方は、クルミ10個を殻ごと4つに切り、95度のアルコールを1リットル、砂糖800g(好みで甘くする)を水1リットルで溶かしたもの、シナモン(粉末でないもの)を25g、クローブを10本、レモンの皮1個分を一緒に混ぜて蓋をしておく。3ヶ月たてば出来上がりだ。
アクがとても強いので、できあがるとエスプレッソのような濃い色になっている。一般的には食後酒として消化を助けるために飲むものだがが、とても香ばしくて甘いので、お菓子作りにも使ったりする。ケーキにかけたり、クッキーに混ぜたり、私がよく使うのは、パンペパートというクリスマスのチョコレート菓子に一緒にいれたりするものだ。
田舎にいると、ローマに住んでいた頃まったく知らなかった食べ物にまつわる伝統を知ることができて、本当に興味深い。
しかしクルミのリキュールを教えてくれたおばさんも、娘はまったく料理に興味がないので私の代でおしまいね、と言う。そうか、それは残念だ。それなら日本人の私が受け継ごうかなと言うと、それはそれですごくおもしろいわ、と笑っていた。
今日子