buonitaliaのblog

2004年07月

私の住んでいる所は夏はほとんど雨が降らない。とても乾燥している地域なので、それでオリーブオイルがおいしい。車で20分行った所で大雨が降っても、うちの周りは晴れていることもよくあり、いつも不思議に思う。

水不足なので水がでなくなることもしょっちゅうだし、畑に水を撒いているのが見つかったら罰金をとられてしまう。皆野菜を洗った水などをとっておいてあとで畑に水をやったり、冬から春にかけて降る雨をいくつものドラム缶に溜めてそれを使ったりと苦労しているのだ。

水は硬質で、日本の水と正反対だ。お風呂に入ると肌が粉ふきいもっぽくなる。日本に帰って日本のお風呂に入ると肌で軟質だと感じる。

トレンティーノ地方の山の人にきいたら、そこでは水は軟質で、どうしてもパスタがうまく茹でられないと嘆いていた。やはりパスタを茹でる水は硬質に限るのだそうだ。そうしないと茹で上がった時にヌタッとしておいしさを十分に発揮できない。ナポリでエスプレッソを飲んだ時、普段飲んでいたのと比べ物にならないほどおいしかった。バールの人に訊ねると一番の違いは水だと言っていた。

同じイタリア内でも地方によってこれだけ水の質が違うと言うのがおもしろい。普段何気なく飲んでいる水だが、知らない間にその水の味に慣れていて、この間フィンランドに行った時にフィンランドのミネラルヲーターを飲んで思わず吐き出しそうになった。おいしい、おいしくないではなく、自分の思っていた味との違いに驚いてのことだった。

水によってこんなに味が変わるのなら、それを使って作る料理の味がどことなく変わってしまうのはどうしようもない壁だと思った。

今日子



庭のくだものが旬をむかえている。うちにあるのはイチジクの木、スモモの木、野生のリンゴ、モモの木、イチゴにラズベリーである。

今年は野生のリンゴとスモモが大量にできたので、そのまま食べる以外にもなにか作らなければならない。すももは木になっているものを熟れてからもぎ取って食べると、果汁がたっぷりで甘酸っぱくて柔らかくてスーパーのものとは比べ物にならないほどおいしい。

今日は野生のリンゴを収穫したのだが、そんなに大きくない木なのにバケツに5杯は採れた。摘果もしていないし化学肥料も殺虫剤も使っていないこのリンゴは、実は小さくて見た目は悪い。しかし味は普通のリンゴが水っぽくて食べられなくなる程濃い。酸っぱくて固いのでお菓子作りにも最適だ。

この木はこの家に引っ越して来た時にはすでにあり、植木屋さんにこの木はもう古いのでもうすぐ死んでしまうだろうと言われた。しかし果物の木は古くなると子孫を残そうとして若いときよりもっと実をたくさんつけるのだそうだ。

採れたリンゴは種をくりぬいて皮ごとオーブンで焼く。中にバターと砂糖、シナモンやクローブをちらしてアルミホイルにつつんで強火で焼く。

できてくるとリンゴの甘い香りがしてくる。焼けると皮までやわらかくなって丸ごと食べられる。近所の子供たちは市販のおやつより採れたての果物の方が喜ぶ。慣れ親しんだ味はどんなスナック菓子よりもいいのだろう。

他にリンゴのジャムを作ったり、アップルパイを焼いたり、それでもまだまだあるので今年はリンゴ酒に挑戦してみようかと思う。

今日子



日本からトマトの勉強に来ている友人がナポリのトマト農家の収穫を手伝いに行っていたが、昨日うちに一時的に戻ってきた。今までいた所はスローフード協会にも入っている農家で、トマトはそこでしか採れない品種、ヴェスヴィアーノというものを扱っている。

毎日朝5時から12時まで休みなく雑草とりと収穫の手伝いをして、トマトの瓶詰めも手伝ってきたと言うからたくましいかぎりだ。真っ黒に日焼けして帰って来た友人が、うちにもお土産でこのトマトの瓶詰めを持って来てくれた。

このトマトは小さくて先が尖っているトマトで、このトマトとうちの畑で採れる「メッザサンマルツァーノ」を別々に2種類のパスタソースにしてみた。結果はちょっとショックだったのだが、圧倒的にナポリのヴェスヴィアーノの方がおいしかった。トマトの酸味、甘み、香り、旨味など、どれをとっても格段に違う。

不思議で仕方がないのだが、イタリアでも皆判を押したように「トマトと言えばサンマルツァーノが一番」と言う。それが私にはどうしてもこのトマトがおいしいように思えない。

昔の原種はそれはおいしかったのだろうが、品種改良が進んでからのサンマルツァーノの味は昔とは違ってしまっている。確かにソースを作るのには種も水分も少ないし、その点では他よりいいのかもしれないが、肝心の味がこうでは苦労して畑で作る甲斐がない(うちの畑で作っているサンマルツァーノは市販のものよりはずっとおいしい)。

このヴェスヴィアーノはナポリの下の方のヴェスヴィオ山の辺りだけで作っている物で、種も他の地方には絶対に出さないよう徹底的に管理しているので、苗を買おうと思っても売っていないのだ。

やはりもう本当においしいトマトというのはイタリアでも手に入りにくいものになってきているのだと実感した。友人は8月からはそのサンマルツァーノを扱っている農家に行くので、一体どんなトマトがあるのか興味津々で報告を待つことにする。

今日子



毎年この時期になると私の住んでいる所では各村で村祭りをやる。2週間続く祭りで、各村ごとにオリジナルの料理をだす。作っているのは村の主婦たちで、私の村では息子の通っている幼稚園のキッチンを使い、幼稚園の庭で食べられるようになっている。

私の村の名物は鹿肉のグリルで、昔は本当にこの辺りで鹿をとっていたそうだが、今はトレンティーノ州から取り寄せているらしい。もちろん他にもパスタやらアンティパストやら一通りいろいろなものが食べられる。値段もとても安くて、毎晩のように夕食をそこでとる家族も多い。

味はどういったらいいかわからないが、そんなにめちゃくちゃにおいしいわけではないけれど、お祭りと外で食べる楽しさと涼めることを考えると、悪くはないといった感じか。

昔ながらの音楽が夜1時くらいまでかかっていて、夕食を食べ終わってバールでゆっくりしながら時々夫婦で踊ったりしているのを見るのはとてもいい。

村の人は夏の昼間は暑いから誰も外にでていないが、夜6時くらいからゾロゾロと外にでてくる。9時まで明るいし、涼しくなってからの方が遊べるからか、小さな子供も皆夜の11時くらいまで外で遊んでいる。

昨日は子供たちだけの合唱会みたいなものがあり、ステージにあがってみんなで歌ったりソロでマイクを使って歌ったりしておおいに盛り上がっていた。3歳から12歳までの子供が参加でき、なんと30年も続いているというからびっくりだ。

子供たちはこの日の夜をまるでデビューするかのように緊張と楽しみとで待っている。1週間毎晩練習があり、本番は両親や親戚中みんなが集まってカメラやビデオを片手に応援する。

うちの息子は歌があまり好きではないので不参加だったが、幼稚園の友人がみんなでているのをみて来年はでると意気込んでいた。終わってから思ったのだが、イタリア人が仕事中でも道ばたでも思わず聞き入ってしまうような歌を歌っているというのは、あれは別に子供の頃から誰でもそうなのではないということがわかってしまった。

今日子



この間書いたインゲンのパスタのバリエーション。
2、300gのインゲンを蒸して柔らかくしたらまたミキサーにかけてソースにする。この時に卵は入れないで、アンチョビ2、3本、ミニトマト4、5個、レモン汁半個とレモンの皮をおろしたもの1個分、パルメザンチーズ半カップ、オリーブオイル4分の1カップ、バジリコの葉を6、7枚、タイム、オレガノを少々、以上を全部ミキサーにかける。お好みでペペロンチーノを少しいれてもよい。レモンの酸味とアンチョビ、パルメザンチーズの塩分があるので私は塩を入れないのだが、物足りない人は少し入れてもよいだろう。もちろん、塩分控えめの方には塩なしでバッチリだ。

これだと前回の濃厚な感じと違い、スパイシーでトマトの旨味も加わってまた違った感じのパスタができる。パスタはショートパスタでもスパゲッティでもおいしく食べられる。

パスタのソースというのはアイデア次第で本当にいろいろな種類ができるものだが、この野菜をミキサーにかけたソースというのは野菜をたくさん食べられる。

パスタと一緒に食べる野菜は、日本の野菜の食べ方のようにサッと茹でた固いものだとうまくからまないので、くたくたになるまで柔らかくするのが主流だ。インゲンやアスパラもサッとゆでて水にさらすときれいな色だが、パスタにはむかない。野菜をたくさん食べるため、色も形もきれいではなくなるけれどクタクタになるまで炒めたり蒸したりするのは根本的に日本と野菜の食べ方が違うのだなと思う。

今日子



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