buonitaliaのblog

2004年11月

昨日の日曜日は、アルナルド・カプライという、ウンブリアの有名なワインを作り、500年前からの伝統的な超高級素材を使った布、メリヤスの工場を持つ人の店に行ってきた。場所はウンブリアのトレーヴィというとてもきれいな街の近くにある。昨日は残念ながらものすごい霧でまわりがさっぱり見えなかったのだが。

講義はここのスタッフで、建築家、修復家で、テーブルマナーの先生のカペッツァーリさんが行った。この人はローマの有名なヒルトンホテルのレストランのセッティングも努めていた人で、イタリア各地で講義を開いているそうだ。ルネッサンス時代、美しいテーブルクロスがいかに大切だったか、食事のマナーやナイフやフォークの置き方、グラスの置き方、お皿の置き方、クリスマスのテーブルセッティングなどなど様々な話をしてくれた。

行くきっかけは、近所に素敵な別荘を持つ仲良しのおばちゃんで、彼女はそこの常連客でもある。「面白いから一緒に行きましょ」と言われて行ってみた。受講料はタダだったが、10人の受講生は皆大金持ちのマダムといったところで、ジーパンに家からでるときについた泥のついた靴をはいているのは私だけだった(笑)。そこで売っている品物もかなりのお値段だ。

内容は、なんというか、家庭では間違ってもこんな込み入ったセッティンはしないだろうなというところだ。それでも国会や大事な仕事上での食事で役に立つようなマナーを教えてくれたので、もしかしたら一生に一度くらいは役に立つかも、という部分が大半だった。伝統的で正当なマナーを知っている人が少なくなっているので、受け継いでいこうという狙いもあるらしい。

講義の中で、カペッツァーリさんが熱を入れていた話に、「自宅にお客様を招待したときのおもてなしの仕方について」があった。実際、イタリアでは(他のヨーロッパでも)お客さんを家に呼ぶことができるというのはある種のステイタスのようなものだ。お客さんに楽しんでもらう、自分の家を見てもらうことは人間関係を築く上でとても大事なことなのだ。さらにお客さんに寝室を提供して泊まってもらうことができたら尚よい。狭い東京に住んでいたら容易とは言えないが、イタリアに住んでみてだんだんこの習慣にも磨きがかかってきた。

行ってスタッフの人にきいたのだが、なんでもここの高級素材を使った洋服をサッカーの中田選手がデザインしてビジネスにしているそう。雑誌ブルータスにもここの会社が掲載されていたそうで、目にした人も中にはいると思う。

テーブルマナーやセッティングの話は、12月10日、11日に料理教室を開く際にお話できたらと思う。もちろん講師は私、朝田今日子が務めます。

今日子



私の住んでいる所は、ローマから約100キロ北に行ったウンブリアの小さな村だ。観光地とは全くかけ離れた、オリーブ畑と麦畑が広がるのどかな場所。ここに住んで5年、ローマに住んでいた頃と全く異なる村の人々の気質や昔ながらの文化を目の当たりにすることになった。中でも一番親しくなっていろいろな田舎生活を学んだのが、二百メートル先に住む大家族、カポッチ家だ。この家族は8人兄弟のうちの3人が、それぞれ隣り合わせに所帯を持って住んでいる。それぞれの家族は子供もあわせて13人もいるので最初は誰が誰かわからなかったが、私達に子供が産まれてからは家族同然のように親しくしてもらっている。

兄弟の末っ子「イーボ」は村の鉄工場を経営している。彼はウンブリアのスペシャリティである肉の炭火焼の達人だ。彼の家の庭には動物園かと見間違うような、家畜を放している大きな庭がある。食卓に上がる肉はほとんどこの庭に放されている動物達で、ニワトリ、アヒル、チャボ、七面鳥、ウズラ、ヤギ、ウサギ、野鳥やクジャク(観賞用)などが自由に歩き回っている。

他に豚や子牛を他の兄弟が飼っていて、それらを親戚中が集まって解体する。始め解体を見たときはギョッとして気持ち悪くなった。何しろ10歳の娘が豚の目玉を転がして遊んでいたのだ(!!!)

しかし夕食に呼ばれて食べるそれらの肉のおいしさには、大げさではなく、目からウロコが落ちる思いだった。イーボはいつもお客さんを招待して大勢で食事をするのが大好きで、20人、30人で大きなテーブルに腰掛けて食べる。お客さんに「このお肉、ほんっとうにおいしいね」と言われると、うれしそうにニヤリとする。「こんなにおいしいお肉なら、私もほしいからぜひ分けてちょうだい」と頼み込みんだ。こうして自分たち用に育てている少ない豚肉などを買うことになりウンブリア式食生活が始まった次第だ(もちろん、解体も手伝う)。

今日子



今日からオリーブの収穫が近所で始まった。午後5時前には暗くなるので、昼間仕事の人も休んで収穫をする。郵便局のおばさんなどは、毎年この時期だけ、収穫のために休みをとって交代を頼む。

寒い中親戚一同厚着をして、長いはしごに上って手でオリーブをこそげ落としていく。木の下には大きな網を敷き、落ちたオリーブを集めてあとから木箱に入れる。

太ったおばさんも年取ったおじいさんもはしごの上まで上るので、みんな元気だなあと感心する。イタリア人にとってオリーブオイルがないイタリア料理なんて考えられないので、皆本当に真剣だ。

オリーブの木は他の果物の木と同じで、その年多く実がなったら次の年は少ない。隣の家は去年多かったので、今年は少ないとちょっと不安そうだ。一年分あるかどうか心配なのだ。

私の方は、シチリアから初物のオレンジが届いた。もちろん、このオレンジは皮をオレンジピールにする。パンペパート作りの第一歩だ。ブオーノイタリアのお客様からも、「もうそろそろパンペパートの時期ですね」という声が聞こえてくる。オリーブオイルと同様、今年もおいしいパンペパートが届くよう、がんばって作りたい。12月をお楽しみに!

*ウンブリア日記も今回で250回目を迎えました。もうすぐホームページが新しくなるので、一緒にウンブリア日記も「パート2」と新しくするつもりでいます。写真もたくさん入れてより楽しいものにしたいと思っています。これからもよろしくお願いします。

今日子



とり肉とパプリカの煮込み。とり肉はなるべく地鶏がよい。味が良いし、水分が少ないので、煮込んだ時に水っぽくならない。

私は普段もも肉と胸肉を混ぜて使うが、もも肉だけでも良い。一羽丸ごと買うのでそうなってしまう。骨ごと3、4センチ角のぶつ切りにする(骨からおいしいダシがでるので骨付きを買うとよい)。

鍋に油も何も入れないでぶつ切りにした肉を入れ、中火で余分な水がでるまで蓋をして煮る。だいたい15分くらいか。でた水分は全て捨ててしまう。こうすると肉の臭みもとれる。

別の鍋にニンニクとオリーブオイル(たっぷり)、ローズマリー、タイムを入れ、強火にしてとり肉を入れて炒める。熱くなったら白ワインをカップ半分入れ、パプリカ(赤、黄一個ずつ)を乱切りにして入れる。生のトマト(熟れていなければホールトマト)を2個皮と種をとって入れる。この時に塩を入れて味を整え、蓋をして1時間弱火で煮込んだらできあがりだ。

とり肉が柔らかくなり、パプリカの香りと甘みが肉にしみ込んでとてもおいしくなる。トマトとパプリカが一緒になったソースが肉によく絡んで大変おいしい、簡単で家庭でよく作る料理だ。

今日子



もうすぐ待ちに待ったオリーブの収穫だ。緑色だった庭のオリーブも、ツヤツヤした黒に変わってきた。毎年11月になると、収穫前まで2週間は雨が降ったり止んだりの毎日だ。こんなことではいつ収穫できることやらと不安になり始めた頃、やっと収穫が始まる。

今年は去年と違って実がたくさんなっている。雨もほとんどなかったし、きっとおいしいオリーブオイルがたくさんできるに違いない(去年は猛暑で花が落ちてしまい、実がほとんどなくてオイルの量がまれに見る少なさだった)。

ボジョレーヌーボーが日本では大騒ぎだが、私にしてみれば、新物のワインより、新物のオリーブオイルの方がよっぽど価値が高い。新もののオリーブオイルのすばらしい芳香や味は、どんな高級食材を並べてみても劣らない味なのだ。

すっかり冬になり、小雨のちらつく中、私は庭のブロッコレッティを採りに行く。雨で濡れたブロッコレッティは氷のように冷たく、採っていると手が真っ赤になって冷たい。

寒くなるとブロッコレッティの味がより濃くなっておいしいので、大変でも逃したくない冬野菜だ。パスタ用にニンニクとオリーブオイルを炒め、生のままザクザク切ったブロッコレッティを弱火でゆっくり蓋をして炒める。もう少しして今年の新オイルができると、ブロッコレッティのパスタにたっぷり生のオイルをかけて食べるのが楽しみでならない。

今日子



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