buonitaliaのblog

2004年11月

ミートソース(ラグーという)が余ったので、スプリというお米のコロッケを作ることにした。スプリはローマのお惣菜屋さんや切り売りピザの店などで見かける、庶民の食べ物だ。

リゾット用にお米を炒め、ワインを入れたら、分量のラグーを半分入れる。時々固形スープのもとを溶かしたお湯を少しずつ入れながら、絶えずかき混ぜる。

20分から25分かき混ぜたら、最後に残りのラグーとパルメザンチーズ、バターを入れて混ぜ、火を止める。この時に、リゾットだと水分がやや多めで波打つくらいにするが、スプリの場合は水分を少なめにして、やや固めにするのがコツだ。

これを粗熱をとってから冷蔵庫で冷やす。冷えたお米は握って丸くしやすい。モッツァレッラを一センチ角の小さめに切ってお米の中に詰め、楕円形にする。詰め物にレバーを入れるレシピもあるが、なくても十分おいしい(私はレバーが苦手なのであえて入れない)。

あとはフライにする時と同じで、小麦粉をつけ、溶き卵、パン粉の順につけていく。これを油でこんがり揚げたら出来上がりだ。食べるとまず熱が通ったモッツァレッラチーズがトロリと溶けてでてくる。これがラグーのコクのある味と混ざってとてもおいしい。

イタリア料理を家庭で作っていると、残り物を使うために自然と出来たレシピが多いことに気づく。このスプリも、何もわざわざスプリを作るために何時間もラグーを煮たわけではない。パスタと和えて食べた後、余ったから違う食べ方にしようと思って作ったのだ。

ブロッコレッティ(菜の花の種類)をたくさんニンニクとオリーブオイルとペペロンチーノで炒めたものをスプリの付け合わせに、ビールを飲みながらの夕飯は満足だった。

今日子



寒いので暖炉をフルに利用している。栗祭りの時に2キロ5ユーロ(700円弱)でたくさん買った栗が余っていたので、暖炉で炭火焼にした。

栗の炭火焼は、栗に一つ一つ包丁で切りこみを入れて穴をあけておく。そうしないと焼いている途中でポンポンはねて爆発するからだ。

栗の炭火焼用に、穴がいくつもあいている専用のフライパンを使う。これは近所のスーパーなどで安く簡単に手に入る。炭火は強すぎず、弱すぎずで用意し、栗をフライパンに入れて煎るように焼く。焦げやすいので、しょっちゅうフライパンを手で回して片側だけ焦げ付かないようにする。

焼けてくると固い皮がパリッと開いて、中から黄色いつやっとした栗が見える。熱々の栗を手で剥くと簡単に渋皮まで剥けてしまう。食べるとホックリ柔らかく焼けていて、炭火焼特有の香ばしい匂いが口一杯に広がる。次々に食べているとだんだん喉につまりそうになるので、赤ワインを時々飲みながら食べると、両方ともじんわりじっくりと味わえる。

私は毎年日本の栗の渋皮煮を栗8キロ分ほど作る(ものすごく大変)。近所のいくつかの農家の人に何度かお裾分けした所、どこもあまり反応がなかった。私のレシピは醤油も入れない、砂糖で煮ただけの渋皮煮でアクが抜けてとても食べやすいものなのだが、やはり農家の人は野趣溢れる炭火焼の方が好きらしい。なにしろこの辺りの人はマロングラッセでさえ変なお菓子で食べない人も多いのだ。

栗の渋皮を残してひげの部分をつまようじでこそげ落とす苦労を、うちに掃除に来る地元の人は変な目で見る。いったい何だってこの人はここまで苦労してこの変な栗のお菓子を作っているのか、まったく理解できないといったかんじだ。

いずれにしても、どんな食べ方であろうと私は栗が大好きなので、ほっといてよね、と言って渋皮煮をせっせと作るのだが。

今日子



先日イタリア人の親戚からDVDを借りた。日本のホラー映画で、すごくおもしろかったからぜひ見てほしいと言う。ホラー映画なんて見たくなかったが、日本語でイタリア語字幕だと言うので日本語が聞きたい私はつい見てしまった。

最近イタリアのPay TVでは、週に一度日本のホラー映画を放送しているのだそう。考えてみるとイタリアで幽霊の映画や話は聞いたことがない。実際、うちでは子供や夫に幽霊のことを言う時、「おばけ」と日本語で言う。イタリア語で話しているのになんでそこだけ日本語なのかと聞かれて、イタリア語でお化けはなんだっけと考えた。ちゃんとスピリトと言う名前があるけれど、この言葉から怖いイメージは浮かばない。

夫に聞いてみると、スピリトは普通、幽霊は幽霊でも良い意味で使われるそうだ。守ってくれる先祖の霊とか、教会にある天使とかを意味するのだ。なるほど、イタリアの幽霊は怖くないのだ。

ヨーロッパでは怖いお化けといえば、イギリスの古いお城で、殺された主が馬で走る音が聞こえるとか、ルーマニアのドラキュラとかが有名だ。

そう考えると、田舎の古い一軒家の我が家はまさにお化けがでてきても良さそうな感じだ。日本には怖いお化けの映画や漫画、昔話が山のようにたくさんあるあると言うと、夫がやっぱり日本人は苦しむのが好きなんだと納得していた。

私は心の中で、そうか私は天使の国に住んでいるのか、と思った。

今日子



豆と豚肉はよく合う。今年の1月に豚を半頭買ったことで、一段と料理の幅が広がった。豚は本当に様々な料理に実力を発揮する。

今日は自家製生ハムの外側の脂と豚の皮(一月に精製した時に冷凍しておいたもの)を使って豆を煮た。豆はトスカーナ豆という薄茶に小豆色の縞模様が入った豆で、煮ると赤茶色一色になるものを使う。

生ハムの脂を皮からこそげ落とし、細かいみじん切りにする。鍋にラードと脂のみじん切りを、タマネギのみじん切りと一緒にゆっくり炒め、好みでセロリも香りづけに入れる。一本を切らないで入れてもよい。

豚の皮は沸騰したお湯に入れて5分程茹で、余分な脂と臭みをとる(この皮は精製した時にナイフで脂をこそげ落としておいたのも)。そしてそれを細切りにしておく。タマネギをじっくり炒め終わったら、そこに茹でて柔らかくなった豆と豚の皮を入れる(豆は一晩水につけた後、1時間煮たら塩を入れてさらに柔らかくなるまで茹でる。豆に塩味がしみ込んでいないといけないので、日本風に最後に塩味を足すという方法は駄目だ)。

次にチューブで売っている、トマトの凝縮したペーストを大さじ一杯から2杯入れる。これは普通のトマトと違い水っぽくないのと味が濃くて甘みが強い。本物のサンマルツァーノのように、これくらい強い味の生トマトがあればそれを使うにこしたことはないが、まず難しいのでチューブで十分だ。そして30分蓋をして弱火で煮たらできあがりだ。

豚の皮はゼラチン質でプリプリしていて、粉っぽい質の豆にはよく合う。生ハムの脂は普通の生の脂よりずっと味が深くて、料理には大活躍だ(ミートソースを煮る時にも使うとソースにコクと深みがでるのだ)。ただの豆の煮物と違って、豚の旨味が豆にとてもよくしみ込んでいておいしい。

今日は突然寒くなり、いよいよ冬本番かという1日だったので、熱々の豆の煮物を食べて暖まれる。

今日子



今日はローマから親戚がやってきた。たくさん食べる人達なので、腕をふるった。七面鳥のモモ肉を一本(ニワトリ一羽くらいの大きさ)焼くことにした。以前に書いたレシピは炭火焼のだが、今度はオーブン焼きである。

オーブンで焼く場合重要なことは、炭火と違い余分な脂が下に落ちないでお皿にたまってしまうので、臭みを十分にとらなければならない。二つよい方法がある。一つは香草をたくさん使うこと。ローズマリーとレモンの皮をみじん切りにしてオリーブオイル2カップ分にたっぷりあわせる。ニンニク一かけも半分に切ってつけておく(これもみじん切りにしてもよいが、あまりにニンニク臭くなり、他の香草の香りが消えてしまうので、おすすめでない)。

これを、塩を多めにふって約1時間置いたもも肉にまんべんなくまぶす。肉には4、5カ所包丁で穴をあけ、穴ごとにニンニク半かけ、ローズマリーの枝をさしこむ。

もう一つ良い方法は、ジャガイモを使うことだ。大きめのジャガイモ10個を一口大に切り、別のオーブン皿に入れてローブマリーと塩、オリーブオイルをまぶしておく。肉と一緒の皿で焼くと、ジャガイモを混ぜにくい、くっつく、焼き加減がバラバラになってしまいむずかしい。

もも肉とジャガイモを180度のオーブンで2段にして一緒に焼き始める。途中で肉汁と一緒に脂がたくさん出るので、それをジャガイモにかけて混ぜる。こうすることで、余分な脂はジャガイモが焼けるのを助ける。この脂とおいしい肉汁で、ジャガイモは普通にオーブンで焼くより数倍おいしくなる(ジャガイモは時々混ぜないとカラカラに乾いておいしくない)。

オーブンで2時間180度、あとの1時間を140度でじっくり焼くことも大切だ。こうしてできた七面鳥のモモ肉は、肉が柔らかくて骨から滑り落ちそうなくらいだ。皮がこんがり香ばしく焼けて、みんな大感激だった。

ジャガイモも周りがカリッとして中が柔らかく、金色に焼けている。肉と一緒に頬張ると最高においしい。

オーブンで焼く場合、下ごしらえをきちんとすることと焼いているときの少しの気配りでだんぜん違ったものができるのだ。七面鳥の他に、ニワトリの丸焼きとジャガイモのローストも同じ方法で作ったらおいしい。

今日子



このページのトップヘ