buonitaliaのblog

2005年04月

今回は写真が撮れなくて残念なのだが、夕食にお客さんを10人も呼び、イタリア料理ならでは、簡単でみんなでわけられる料理を用意した。オリーブの実のクロスティーニ─パスタ─肉料理オーブン焼き─野菜─トルタという具合(料理をしている時やできあがって食べる前に写真を撮るのは本当に難しいのだ)。

この中の豚肉のロースを固まりで焼く料理が大好評だったのでご紹介する。“カレ”はフランス語の「Carre'」でパン・カレとかと同じ箱形を意味する。料理と言っても簡単で、少しのことに注意すればなんでもない料理だ。骨付きのロース肉の固まり約2キロに塩をすり込み、生のローズマリーとセージの葉、ニンニク1かけをみじん切りにして(約茶碗一杯分になるくらい)まんべんなくすり込む。特に骨の部分の臭みを和らげるために、骨の周りにたっぷり香草をまぶし、深めのオーブン皿に入れて焼く。なぜ深めがよいかは、肉を焼いていると大量の肉汁が出てくるため、皿が浅いとオーブンの熱で蒸発してしまい、肉がカラカラに乾きすぎてしまう。

オーブンの温度は200度で、2時間半程焼いてみた。時々たくさんでる肉汁を肉の上の方に回しかける。オーブンの下の段で焼いている、別のオーブン皿に入れた乱切りのジャガイモにも肉汁を回しかけて混ぜておく。こうすると、ジャガイモと肉を別々に焼いてもジャガイモにたっぷり豚肉の旨味がしみ込み、たかがジャガイモと馬鹿にできない程おいしく仕上がるのだ(ジャガイモは焼く前にオリーブオイルと塩をし、ローズマリーも入れて混ぜておく)。

さて、こんがりすばらしい焼け具合になり、竹串で焼けたかどうか肉に刺してみると、透明の肉汁がでてくる。肉汁がピンク色だともう少し焼いた方がいいので、肉の大きさによって焼き加減をみることが大切だ。

これを1センチくらいの厚さに切りわけ、骨も一本ずつはずしていく。骨はよく焼けると間接の所から簡単に折れ、この骨の周りについている肉を食べるのがまたたまらなくおいしい。お皿にジャガイモと肉と骨を盛りつけて、最後に肉汁をかけて食べる。オーブンで大きな肉をかたまりで焼くと、驚く程やわらかくしっとりと焼け、思わずウ~ンとうなってしまう程だった。

農家の人に“おいしい”と言わせることはかなりむずかしい。なぜなら彼らは常に最高の素材を食べているので、そんじょそこらの買ってきたもの、調味料でごまかした料理、お金をだせば手に入る高級素材など使ってみても決しておいしいとは思わないのだ。世界中の様々な“買える料理”を食べている人達の舌が必ずしも肥えているとは言えないのがわかる。その土地で採れる新鮮な食べ物を食べて来た彼らの舌は抜群に肥えている。

自分で育てた野菜や家畜を食べていたら、買って来たものを食べてもこうはならないことがわかる。私はいつもそういう人達に夕食に呼んでもらい、どういう物がおいしいか、そうでないか、かけがえのないことを教えてもらう。ちょっと大変でも、ご近所さんを夕食に招待することは、これからもよろしくねという意味で大事なのことなのだ。

今日子



しかしこの所お客さんが多い。先週は木曜日の夕食に3人、日曜日は親戚とその友人が2歳の子供2人を連れてきて昼食と夕食を一緒にし、今日月曜日からは3日間、仲の良いフランス人のおばちゃんの甥が家にいる(日本語を勉強しているのだそう)。木曜日はいつも食事に呼んでくれるとなりのカポッチ家を4人招待する。来週は真ん中で2日間日本から知人が来る。

こんなに重なることは珍しいかもしれないが、それにしてもこういうのはイタリアならではだろう。皆自宅に友人を招待してもてなすことが好きなのだ。フランス人のおばちゃんは、「パリでは皆家が小さいから普通は友人とレストランに行くものよ。」と言っていた。東京でもそうだろう。

人数が多いと料理をする時にも分量が普段と違い、慣れなくて始めは間違えることも多かった。しかしこういう時、やはりイタリア料理は和食に比べて楽だなと思う。ソースをたっぷり作って多めにパスタを茹で、肉の固まりをオーブンで焼いたりすると皆で小分けにして食べられる。前菜にはいつもの保存食(オリーブのパテやサラミなど)を使い、ドルチェは大きくて簡単なクロスタータでも焼いておけばそれですむからだ。

それがこの間は成り行きで和食を作ることになってしまい、えらい苦労をした。当然、ここには和食の材料は乏しいので、日本にいたら買ってすませるものでもいちいち作らなければならない。鍋をやろうと思っても材料もない。それでいて外人の好きな和食を作ろうと思うと、必ず皆が知っている天ぷらや寿司をリクエストされる。私が作ったのは、豆腐(もちろん大豆から)、精進揚げ4種類、カンピョウ巻きと卵巻きにカッパ巻き、豚の角煮、ひじきの煮物だったのだが、はっきり言ってこんなメニューをわざわざ全部作って食べる日本人なんて珍しいだろう。前の晩から用意して、天ぷらも揚げたてをだすので自分で食べる暇などなく、終わった時にはもうこんなこと二度とするもんか、と思うくらい疲れまくった

おもてなしで大事なのは、おかわりを勧めることで、私はこの勧めることがとても苦手だ。やはり皆に勧めて「No Grazie」(いいえ、結構です)と全員に言われたら、その後シ~ンとしてなんとなく間が悪い。気にしなければいいのだろうけど、結構傷つく。だからいつも食べたかったらそれぞれ勝手にとればいいのになと思う。自分がお客の時も、お腹がいっぱいなのについこの「No Grazie」を言えなくて余計に食べてしまい、後で後悔する。イタリア人のおばちゃん達は勧め上手で、なかば強引にもおかわりをさせてしまう。「No grazie」を言わせない押しがあるというか、こういう時私はつくづく日本人だなと実感するのだ。

今日子



まだ天気が悪く肌寒い日が続くが、野菜は季節ものが出始めた。この時期はなんといってもアスパラ、アーティチョーク、空豆、グリーンピースの4野菜が目玉だ。イタリアのグリーンピースはとにかく甘くて香りがよい。そして空豆も日本の空豆より若く小さいうちに食べるので、生で食べてもおいしい。日本のようにりっぱに大きくなってしまったら中身のやわらかい部分だけ食べ、普通に食べる黄緑色の部分は捨てたりする。それをいつももったいないなあと眺める。

生で食べるのもおいしいが、料理もする。彩りのための空豆ではなく、たっぷり食べる料理で代表的なのは、グリーンピースと空豆の煮物だ。だいたい2種類ともさやがついていたら1キロずつはないとほんの少ししかできない。

深鍋にタマネギのみじん切りを、オリーブオイルと一緒に弱火でじっくり炒める。次に乾燥の香草(バジリコやオレガノなど)を入れ、グリーンピースと空豆を生のまま入れる。塩をしたら弱火で蓋をし、じっくり1時間以上煮る。最初から弱火で煮ると野菜からじわじわと水分がでるので、その水分で煮ることが大切だ。時々焦げ付かないように混ぜ、水分が足りないようなら少量の水を加える。空豆とグリーンピースが指ですぐつぶれるくらい柔らかくなれば出来上がりだ。ベーコンや生ハムの切れ端を入れる人もいるが、私は野菜だけの味を楽しみたいので入れないで作る。最後にイタリアンパセリを刻んでいれてもさっぱりさわやかでおいしい。

両方の豆がお互いに協力し、グリーンピースの甘みと空豆のほろ苦さがたっぷり味わえる。これをお皿に山盛り、パンを二切れ、チーズを一切れで今日のお昼はできあがり。

私の料理は"蓋をして弱火でじっくり煮る"というのが多く、煮ている間は2階でパソコンに向かって仕事をする。ウンブリア日記を書いたり、シルヴィオの原稿の翻訳をしたり、ずっと家にいるからできる料理とも言えるが、失敗も多い。仕事をしているうちに鍋のことをすっかり忘れてしまい、何度料理を焦がしたことかしれない。気がつくと煙が2階までモクモクとあがっていて、しまったー!!!と階段を駆け下りる。そして下で新聞を読むシルヴィオになんで気がつかなかったの!?とプリプリする(かわいそうなシルヴィオ)。でも煙は上に上がっていく性質があるのでわからなくても仕方がないのだっけ、と後で後悔する。

今日子



ここ2、3日は雨で寒い。もう今年はおしまいかと思っていた暖炉と薪ストーブをつけることにする。そろそろ野生のアスパラガスがたくさんでる頃だろうが、天気も悪いので、近場で庭に植えたアスパラガスを採りに行く。アスパラが生えているのを見つけると「おおっ」とうれしくなる。雨が冷たくてアスパラを採り終わった手が氷のように冷たくなり、まるで冬のようだ。

全部で15本採れたアスパラ、今日は手打ちパスタで食べることにする。手打ちパスタは卵を使ったパスタで、むずかしく考えることもなくあっさりできる。うどんと違い、手打ちだからすばらしいというものではないので普段は乾燥パスタをよく食べるが、アスパラと卵はよく合うのでこの時期にはかならず作るのだ。

小麦粉と卵の割合は100gにつき全卵1個で考える。小麦粉は気温や湿度、収穫してすぐと時間が経ったもので水分の割合が違うので、その都度手で微妙な様子をみることも大切だ。うどんを作ったことがある方なら知っているだろうが、強力粉と水だと弾力があって足で踏んだり、生地を伸ばす時にとんでもなく大変な思いをする。それがこのパスタはそこまで弾力もなく水分も多いので、伸びやすくて楽なのだ。

たいてい急いでいるので生地を休ませるのも15分かそこらで、前々から準備をしなくてもよい。これをめん棒で伸ばしていき、2ミリくらいの厚さになったら打ち粉をふって生地をめん棒に巻き付ける。そしてその生地を包丁で端から端まで切る。次にめん棒から外して重なったままの生地を二つに折り、包丁で3ミリくらいの幅に切っていく。あまり神経質になりすぎず、少しくらい幅が違っていても気にしなくてよい。太い所と細い所でソースの絡み具合が異なり、アスパラのソースによく絡んで機械で作るよりずっとおいしいのだ。

アスパラは、生のまま一口大に切ってニンニク、オリーブオイル、塩だけの味付けにし、蓋をしてゆっくり弱火で炒めるだけだ。野菜の味を直接楽しむことができる。アスパラがアルデンテではパスタに絡まないので、柔らかくとろけるくらいまで火を通すことが大切だ。パスタを熱湯で茹で、沸騰して30秒から40秒くらいしたらザルにあげてアスパラと和える。和える時にパルメザンチーズとオリーブオイルを少々回し入れる。採りたてのアスパラは香りと甘みが特別で、卵入りのパスタもこんなに簡単にできるのかと思う程おいしい。

さて、5月24日から1ヶ月間日本行きが決まりました。リクエストにお答えしてまた料理教室を開く予定です。このアスパラの手打ちパスタはその時のメニューにぜひ入れたいと思っています。料理教室の日程など、詳しいことが決まり次第HPに載せますので、ぜひ参加してください。楽しみにしております。

今日子



近頃魚屋でアンコウをよく見かける。名前はヒキガエルのシッポという意味で「Coda di rospo」(コーダ ディ ロスポ)。頭は切り取られて店頭には並ばず、ゼラチン質の皮も全部剥いである。

アンコウは肉厚で骨が少なくて骨を恐れるイタリア人も安心して食べられるのだろう。欧米ではお箸を使わないせいか、皆骨の多い魚を嫌う。レストランで魚を頼むとウエイターが骨を全部取り除いてお皿に盛ってくれるが、じっくり骨を除けながら箸で食べてしみじみする感覚とはちょっと違う。お皿にとりわけた時点で魚が冷えてしまうのも残念に思う。でもたしかに、フォークとナイフでは上手く骨を取り除けないので、仕方がないか。

アンコウは日本だと鍋が多いが、こちらではトマト煮、ホイル焼き、グリルなどをよく見かける。今日はトマトで煮てみることにした。

アンコウは塩をふってニンニクを4カケ包丁で軽く潰し、オリーブオイルと炒める。そこにアンコウとイタリアンパセリをそのまま入れて炒め、白ワインを半カップ入れる。次にトマト(ミニトマトの方が甘みがでてよい)を5、6個半分に切ったもの、オリーブの実約10個を入れ、蓋をしたら30分くらい中火で煮て出来上がりだ。アンコウの臭みが残らないように、ニンニクと白ワインをうまく使い、火を切る前にイタリアンパセリのみじん切りをたっぷり入れて出来上がりだ。

プリプリした感じの肉質はトマト味でもよく合い、なかなかおいしい。それでもかすかに匂いが気になるような気がしたので、ペペロンチーノを入れて辛くしたらもっとよくなるかなと思う。白身の魚とオリーブオイルとニンニクの組み合せはおいしいのだが、やはり日本人にはしょう油味の方がしっくりくるような気がする。

皮やキモなどおいしい部分を全部捨ててしまうのかと思うともったいない。日本ではアンコウのキモも食べるんだよと一緒に食べたイタリア人の友人に言うと、かなり、というかものすごく変な顔をされた。アンキモって珍味でおいしいのに・・・。そういえばシルヴィオも最初に食べた時はギョッとしていたっけ(今は好きだけど)。

今日子



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