6月21日夜、ウンブリアにたどり着く。約1ヶ月の日本滞在はあっという間に終わった。ローマ空港から車で自宅まで行く途中、田園の景色はすっかり変わっていた。延々と続く麦畑は緑から金色にかわり、もうすぐ収穫の時期だ。その麦畑の色とオリーブ畑の薄い銀色と緑色の混ざった色、紫色の夕焼け空、レンガ色の古い街並をぼんやり眺めていると、本当にきれいで、やはり自分はイタリアが好きなのだと実感する。
家に着くと2匹の犬と猫が大喜びで、うれしい。そして息子の大親友のガブリエーレと彼のお母さんが焼きたてのピザと大きなケーキ(この日は私の誕生日だった)を置いて待っていた。ケーキはガブリエーレの姉のジュリア(12歳)がどうしても今日届けたいとがんばって焼いてくれたものだ。
空港から車の運転をしてくれた友人も、野菜たっぷりのパイを焼いて持ってきてくれ、冷蔵庫には生みたての卵などが入っていた。こちらに住んでいるといつも東京のことを考えてしまうが、私の生活はすっかりウンブリアに落ち着いている。
東京に行く前に植えておいた夏の野菜が気になっていたので見に行くと、トマトもナスもすっかり見違える程大きくなっていてバンバンザイだ。次の日にはさっそくズッキーニとインゲンを収穫して食べることにする。
インゲンはパスタにしてもおいしいが、やはり最初の収穫では蒸してオリーブオイルとレモン汁、野生のミントの葉、塩で和えて食べることにする。これが一番インゲンそのものの味を楽しめる食べ方だろう。採れたての野菜はびっくりする程火の通りが早い。
火が通ったかどうか、何も味付けしていない段階で一本食べてみると、そのままでも死ぬ程おいしい。これで我が家の最高においしいオリーブオイルをかけたらどんなにおいしいことかと想像してうれしくなる。
ズッキーニは3、4ミリの厚さに切って塩をふり、グリルで焼く。東京で1本200円もするズッキーニを買って食べてみて、ショックをうけた。これでは日本人がズッキーニをキュウリの親戚くらいにしか思っていないのもうなずける。ズッキーニがどんなにおいしい野菜なのか、もっと広められたらいいのに。日本から来た友人は皆ズッキーニってこんなにおいしい野菜だったのかと驚嘆する。苦いと思っていた、味がしない没個性の野菜だと思っていた、などなど、本当に残念なことだ。ズッキーニは種を植えると何の問題もなくどんどん育ち、夏中たくさん採れる野菜なのだが、日本ではそうでもないのだろうか。
暑さが大の苦手の私にとって、自分の作ったおいしい野菜を存分に味わえることが、夏の最重要事項と言ってもよい。村の夏祭りや村の人々の夏の過ごし方なども織り交ぜて、またウンブリア便りでいろいろお知らせしたい。
*日本滞在中に料理教室にいらして下さった方、わざわざお店まで出向いて下さった皆様、本当にありがとうございました。
今日子