アマトリチャーナというパスタをご存知だろうか。トマトとベーコンのパスタである。ローマのレストランでおすすめとなっている所が多いので、ローマ料理と思っている人も少なくない。

しかしアマトリチャーナはアマトリーチェというアブルッツォ地方(中部イタリアアペンニー山脈のあたり)の料理である。

とても小さな村で、歩いて一時間もしないで全部見られるが、この村のアマトリチャーナにたいするこだわりはとても強い。でまわっている瓶詰めのアマトリチャーナソースは本物ではないと、このソースを作っている各会社に抗議したほどである。

では本物はどうかというと、まずオリーブオイルではなく豚のラードとたまねぎのみじん切りをゆっくり炒める。ベーコンはグワンチャーレと言われるほっぺたの肉のベーコン(脂身が多い)をたまねぎと炒め、そこに生のトマト(熟したもの)を炒める。長く煮こまないで、できたらブカティーニというスパゲッティの中が空洞になっているもの(ちょっと食べにくい)を和えて、上に黒コショウ、ペコリーノ(羊のチーズ)をかけて食べる。香草、ニンニクは一切使わない。

これがアマトリーチェ市民のいうアマトリチャーナだそう。もともとのアマトリチャーナはトマトが入っていないパスタだったそうだが、今はトマト入りが主流になっている。

実際食べてみるとピリッとこしょうが利いて、トマトソースまみれでトマトの味しかしないというのと違う。少しのトマトでも煮こみすぎていないので甘味があっておいしい。羊のチーズの香りも独特でとてもおいしかった。ベーコンもラードもチーズも村では各家庭で作っているもので、やはり瓶詰めとは全然違った。

今日子