今年も栗祭りが近くの村で行われた。村のうしろには栗の大木が山全体に広がっている。この祭りは毎年10月の最終日曜日に村で行われる。昔ながらの古い鉄の大釜で炭火焼にした栗を売ったり、村の主婦お手製の伝統的な栗の生菓子や栗のジェラートを食べられる。
お祭りなので、ドーナツの原型のような、揚げたピザにお砂糖をかけたもの、手作りサルシッチャ(生ソーセージ)の炭火焼なども今年のワインと一緒に食べられる。
栗の炭火焼は、ローマの道ばたで売っているものと比べたら格段のおいしさだ。焼き加減も絶妙で、皮は手でパリッと簡単に剥け、ほっくり柔らかくて次から次へとほおばってしまう。この焼き栗とワインコップ一杯で1ユーロ50セントだ。日本円で200円しないくらいか。
一番の楽しみはここの生菓子で、栗を茹でて裏ごししたペーストをベースに、エスプレッソと混ぜてココナツを上にまぶしたお団子や、松の実などナッツ類と一緒に丸めて焼いたお菓子などがある。シンプルで見た目は素朴だが、これだけ栗を贅沢に使った生菓子も珍しいだろう。
これらのお菓子は生クリームなどでのばして膨張させていないので、栗だけのおいしさが味わえる。
ちょっと考えても、これだけの栗を茹でて皮をむくのがどれだけ大変かわかる。一年に一度ということで、つい気合いも入ってしまう。お祭りが終わると、次の祭りまで一年中あの生菓子が早く食べたいと思ってしまう。
近くの村に一軒しかないレストランでも、この日だけ特別に栗料理を出してくれる。目玉は豚のローストの栗ソースがけだ。薄切りにした豚肉に栗と肉汁、スープをいれてのばしたソースをかけて食べる。
脂肪分の少ない部位でパサつきがちな肉も、濃厚な栗ソースがかかって食べやすい。栗ソースは砂糖が入っていない、ほんのり栗だけの甘みと香りが豚肉とよく合う。
普段は静かであまり人気のない村なのに、この日だけは村の何キロか先まで車が駐車してあり、場所を探すのも大変な賑わいなのだ。
今日子
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